V.A. 「Yes, We Love butchers 〜Tribute to bloodthirsty butchers〜 Abandoned Puppy」 「Yes, We Love butchers 〜Tribute to bloodthirsty butchers〜 Mumps」

約15年ぶりとなる bloodthirsty butchers のトリビュートアルバム。


今回集められたのはブッチャーズと縁の深い、あるいは彼らに強い憧れを持ったバンドばかり。となれば当然のように一筋縄ではいかない豪傑揃いであります。気になったのを順に挙げていきますと、 ACIDMAN 「襟がゆれてる。」 は繊細かつ大胆に空間的な轟音を放出する、極めて誠実なポストロックサウンドとなっており、久方ぶりに彼らの音に触れた自分は目から鱗の心地でした。今の彼らってこんな風になってたのかと。 BRAHMAN 「散文とブルース」 は僅かながら歌詞が追加され、 TOSHI-LOW のパーソナルな (しかしながら今回の参加バンド全てに共通するであろう) 想いが込められた感傷的な内容に。男気に貫かれた可変速ハードコアの COCOBAT 「ROOM」 はどう聴いても完全に COCOBAT 、またマニアックな所から選曲したロマンポルシェ。ラリホー」 はどう聴いても残念なくらいにロマンポルシェ。 (笑) 。ラストの THE STARBEMS 「ギタリストを殺さないで」 はヒダカトオルのハードコア魂が炸裂した甘さ抜きの哀愁エモコア。ファストでタイト、かつメタリックな骨太さもあって意外なくらい格好良かった。

Rating: 8.1/10

上と同時発売の bloodthirsty butchers トリビュートアルバム。


2枚それぞれの方向性に大きな違いはありませんね。初期 OGRE YOU ASSHOLE を思わせる牧歌的インディロックで随分と風通しの良い CARD 「sunn」 に早速驚かされる。 cinema staff 「僕達の疾走」 は残響レコードらしいシャープなギターサウンドも良いけど、それよりも端正さの中に甘酸っぱさや艶やかさを見せるヴォーカルの巧さに惹きつけられた。確かにこりゃ人気出るわ。 LOSTAGE 「JACK NICOLSON」 は生々しい歪みを響かせながら遥か遠くを目指して突っ走る、その心身を擦り減らすようなエモーションの奔流に打たれました。向井秀徳NUMBER GIRL 時代にもカヴァーしていた 「プールサイド」 。歯切れ良く爪弾かれるアコースティックギター、そこにノスタルジックな響きのフルートを添えるのは田渕ひさ子。もう色んな意味でグッとくる。 THE NOVEMBERS 「11月」 は洒落のようだけど中身は洒落になってない、もともと実験的 (悪ふざけ) だった曲が拡大解釈されて危険な美しさを孕んだアレンジに。総じて大将相手に一切遠慮なく己の個性を注入した、それが礼儀だと言わんばかりの愛情ある2枚です。

Rating: 8.2/10