dip 「neue welt」

neue welt

neue welt

9ヶ月ぶりとなる13作目。


今回は映画 「クローズ」 のために再録した過去曲も入ってたりと若干変則的な内容。しかしながら楽曲はいつもの dip らしく、さすがは日本のインディ・オルタナティブの良心と言える高品質ギターロックが並んでいます。 「Neue」 「Melmo」 など激しいディストーションを噛ませたロックンロールがあれば、 「Fire Walks With Me」 「Final Song」 のように幻惑的なサイケデリアを靡かせる曲もあり、中には黒っぽいファンクネスで熱狂的に踊らせる 「Blinking Sun」 や、静かな朝に似合いそうなネオアコ風ナンバー 「Morph」 といった dip にしては珍しいタイプの曲も。全体的には陰鬱としたムードが漂っていますが、その中でもラウドかつグルーヴィなアッパー要素と、内省的なダウナー要素を組み合わせて大きな波を生み出し、彼らならではの渋く力強い音世界を作り上げています。タイトルは 「新世界」 の意とのことですが、ここで描かれているのは苦しみのないユートピアのような世界ではなく、それまでの冷たく荒涼とした世界から脱け出すための痛みと切なさ、ではないかなと思います。ここにきてなお表現力を深化させた感が。

Rating: 7.9/10