piana 「Muse」

Muse

Muse

盛岡出身のシンガーソングライターによる、7年ぶり4作目。


表題の 「Muse」 とはすなわち 「詩神」 、かと思いきや 「黙想する」 といった意味も別にあるそうです。しかしここでの彼女の目線は内省の淵ではなく、明らかに外を向いているように感じられます。以前の作品のようにウィスパー系の繊細な声や、アコースティックな生楽器とエレクトロニカサウンドを融合させた音楽性はそのまま。今作ではそこからさらに一歩踏み出し、ヴォーカル/メロディをはっきり前面に打ち出した内容になっています。それまでは空気に消え入るがごとくアブストラクトだった歌メロが、ふわりと柔らかい輪郭を持ち、確かなハーモニーを響かせ、言葉を聴かせる。深い音響処理がホーリーな雰囲気を醸し出すピアノ独唱曲 「I Think...」 に始まり、今作中最もドメスティックなポップ感のある切なさが強く胸を打つ 「In Silence」 、 wolrd's end girlfriend の往年の名曲 「call past rain」 を少し彷彿とさせる 「Ruins」 、かつてないほどの壮大さ、力強さを放つ 「Phosphorescence」 など、意外なほどの動的パートの導入、バラエティの幅広さもあって殻を破った印象を強く残す9曲。

Rating: 8.5/10