椎名林檎 「逆輸入 〜港湾局〜」

他アーティストへの提供曲を集めたセルフカヴァー盤。


広末涼子ともさかりえSMAPTOKIO などアイドル方面への提供が主なわけですが、比較的真っ当なガールズポップを意識した感がある昔の曲に比べると、最近の曲は自身のオリジナルと並べてもほとんど差のない出来で、最近の方がポップシーンに対して大胆に挑戦するようになったのかな…などと、彼女の意識の変化が読み取れるようで面白いですね。ただ今回は各曲毎に異なるアレンジャーを迎えた結果、モノによっては原曲の面影がないほどに改編されています。 「あまちゃん」 のイメージを覆す猥雑さに満ちた大友良英 「主演の女」 、さすがの殺傷力抜群なデジタルハードコアで激しく斬りかかる上田剛士 「渦中の男」 、普段よりは品のある華やかさ、賑やかさが原曲のキュートさを引き立てた前山田健一 「プライベイト」 、この3連発がなかなかに鮮烈。あとはガッツリ歪んだオルタナロックンロールの根岸孝旨 「雨傘」 で、最近こういうのやってなかったよなあ…と思わず感慨に耽ったり。ただロック、ジャズ、テクノと振れ幅の広い楽曲が集まっても割と普通に聴けてしまうのは、これまでの彼女がいかに雑食な芸達者であったかの裏返しでもあるのかなと。

Rating: 8.1/10