川本真琴 「川本真琴」 「gobbledygook」

川本真琴

川本真琴

1997年に発表されたデビュー作のリマスター再発盤。


この頃の彼女の作風がどんなものだったかは、70年代後半〜80年代前半くらい生まれの人ならば知らない人はいないくらいのものだと思いますが、今回の再発に際して添えられた彼女自身による作品解説は、解説というよりも当時の状況のぶっちゃけ話のようなもので、今作がいかに苦心の果てに作られたかを (彼女らしい軽いタッチではあるものの) 切々と語るものでした。彼女の作品というよりはディレクターやアレンジャーがガッツリ関わった 「川本真琴」 という制作チームによる作品、という感じ。それを踏まえて聴くとここに収録された楽曲は今までとは少し違った風に聴こえます。もちろん彼女が楽しみや意義を見出しながら作曲していたのだとは思いますが、16分のリズムに歯切れ良いアコギのストローク、高鳴る心音のように跳ね踊る甘酸っぱさ満載のポップソングという、そのパブリックイメージは彼女自身にとってもある種の虚像だったのかなあと。そう考えると今作が個人的なノスタルジーも重なって、決して戻ることのない遠くの陽炎のような儚い印象を受けるのでした。しかし改めて聴いても 「愛の才能」 の岡村ちゃんの主張っぷりは凄いな。デビュー曲なのに (笑) 。

Rating: 7.9/10




gobbledygook

gobbledygook

2001年に発表された2作目の、同じくリマスター再発盤。


デビュー作を出して以降の暗黒期を越えて、ここに来てようやく 「やりたいようにやっていい」 との許可が下りたらしく、こう、メジャーって色々大変なんですねって。そのやりたいことをやるという言葉の通り、かつて苦心して作り上げたパブリックイメージを自らブチ壊すかのごとく、ロックサウンドとプログラミングが大胆に交錯するおもちゃ箱ワールドが展開されています。初っ端からアグレッシブに弾けまくった 「ギミーシェルター」 、ドリーミーで幻惑的な世界観が広がる 「OCTOPUS THEATER」 、ストリングスやクワイアを大々的に取り入れた10分超の大曲 「FRAGILE」 など、キッチュな遊び心てんこ盛りの15曲。90年代の J-POP マナーから逸脱しようとする自由度、創作意欲のバーストっぷりは痛快なほどで、それは本来の彼女がこちら…というよりも前作を踏まえたからこそ次第に色んな欲求が生まれ、ネクストステップに到達したということでしょうね。ついでに言えばメジャーシーンで出来ることを突き詰めたこの作品を経て、素朴な傑作 「音楽の世界へようこそ」 が次に生まれたのは自然な流れだと思います。

Rating: 8.2/10