神聖かまってちゃん 「英雄syndrome」

1年10ヶ月ぶりとなるフルレンス5作目。


の子は今でも足掻いている。一時期のハイプも落ち着いた感のある彼らですが、の子自身は自分たちがメジャーシーンに食い込んでいくためにどうするべきか、ひたすら足掻きもがいている印象を受けます。今作はサウンド的には過去最高に洗練された、明るいタッチに仕上がっています。最近のの子がネットに公開する楽曲もうつ病がいくらか軽快したような明るいものが増えてはいましたが、バンドもその流れのままにシンセやピアノの音色を前面に押し出し、空間を埋め尽くすようにしてカラフルな音世界を広げていく。春の風のような疾走感が切なさを際立たせるドリームシンセポップ 「オルゴールの魔法」 、微妙に tofubeats の影響も感じられる実験的ヒップホップ 「彼女は太陽のエンジェル」 、またアコギ弾き語りの 「おかえり」 やヴァイオリンをフィーチャーした 「背伸び」 では牧歌的な郷愁を感じさせたりと、音楽性は確実に進歩、成熟を果たしています。良い意味での軽さ、鮮やかさを強調してオープンなポップスへ向かった意欲作。その一方で 「ロボットノ夜」 のような楽曲もポロッと生まれてしまうのがまたこのバンドらしさなのですがね。

Rating: 8.2/10