ILL BONE 「死者」

死者

死者

中田潤を中心とする4人組の、1985年に発表された EP 作の再発盤。


ILL BONE =イルボン、すなわち日本。曲目にはベイルート、アメリカ、そして死者。バンドのコンセプトからは極めてポリティカルな批評性、奥底から沸々と煮えたぎる反骨精神を感じますが、歌詞にはそういった側面が確かにありつつ、むしろ詩としての文学的な美しさ、淡々とした中に見せる叙情、叙景のささやかな色味が印象的。彼らは自身の音楽性を 「ラウド演歌」 と称しているようですが、むしろ演歌と言うかフォーク的な燻し銀の奥ゆかしさを感じさせる歌声。何にせよ彼らの内には確実に歌/メロディを聴かせようという意識が中心にあったのでしょう。しかし曲調は演歌から何光年も遠く、フリーキーなギターと変則リズムパターンから構成される極めて実験的なアンサンブル。それは INU とは全く別の角度からポストパンクを日本的に解釈 (曲解) したもののようであり、 downy54-71 が目指していたオリジナリティの極北、もっと言えば Fugazi や Slint よりも先を行った強烈にハードコアな個性が、浮かばれない死霊のように悲しい音を木霊させています。トランス再発第一弾の中で最もオブスキュアであり、最も危険な劇薬かもしれません。何なんだこれは。

Rating: 9.1/10