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クリスマスアルバム私的10選

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我々はスピーカーから震え出す空気の振動とともに様々な影響元、作り手の出自、あるいはブックレットに載っている解説などを確認しながら音楽を聴いています。多くの古典を参照していれば単調なパンクでも奥ゆかしいものに感じられ、生死の境目を潜り抜けてきた人物なら優しいフォークソングでもヘヴィに聴こえ、本当は悲しい音楽だという評論家の言説によりレゲエは悲愴感を纏います。その他視覚的、メディア戦略的な部分だって重要なファクター。様々な音楽以外の情報により音楽自体はどんな風にも表情を変え、違ったイメージを与えられれば慣れ親しんだ音楽でも新鮮に感じることができます。何故なら実際のところ、音など聴いてないからです。


以下に挙げる10枚はクリスマスにピッタリの音楽です。




Nurse with Wound 「Homotopy to Marie」

Homotopy to Marie by Nurse With Wound (2007-10-16) 【並行輸入品】

Homotopy to Marie by Nurse With Wound (2007-10-16) 【並行輸入品】

ロンドン出身、 Steven Stapleton によるソロユニットの1982年作。最初の曲を再生して1分、そこで曲を止めるか、それとも聴き進めるかであなたが選ばれた人間かどうかが分かります。これの前々作にあたる 「Merzbild Schwet」 あたりで独自のノイズ・コラージュ錬金術を確立し、この作品ではその手法がいよいよ極まりつつある、その巨匠の貫禄を実感できます。聴き手に徹底して緊張を強いる悪意の権化のような音響空間。その遺伝子はテン年代エレクトロニカ最新鋭にも確実に受け継がれています。全ての道はナースに通ず。



Nurse With Wound - The Schmurz (Unsullied By Suckling)




Suicide 「The Second Album」

Second Album

Second Album

ニューヨーク出身の2人組による1980年作。セルフタイトルのデビュー作は日本の某アイドルがジャケットをオマージュするほどにすっかり定番と化していますが、エキセントリックな衝動の産物だったそのデビュー作から音楽的に大きく成熟し、当時のニューロマンティクスあるいはグラムロックからの影響も感じられ、サウンドの端々から艶めかしくセクシーな色気をムンムンに発しています。そこはかとなくダークで野蛮、そしてインテリジェントな佇まい。彼らの本質がロックンロールであることがよく分かります。



Suicide - Diamonds, Fur Coat, Champagne (1980) MFEAE




Rancid Hell Spawn 「Jumpin' Jack Flesh」

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ロンドン出身のバンドによる1989年発表のデビュー作。クソ喧しいのにスッカスカなノイズギターと能天気なシンセが聴き手をみるみる脱力させていく、悪意てんこ盛りのジャンク・パンクロック。多分ドラムも打ち込みっぽいからバンドと言いつつ一人で作ってるんじゃないかこれ。いかんせん詳細が分からんのでなんとも。ただ1分前後のショートカットナンバーが矢継ぎ早に繰り出され、その全てが気色の悪いニタニタ笑顔で包丁振り回すように迫り来る、その様は奇跡のようにパンクス。何かの間違いとしか思えない。



Rancid hell spawn - Sex in a butchers shop




Esplendor Geometrico 「El Acero del Partido - Héroe del Trabajo」

El Acero del Partido - Héroe del Trabajo

El Acero del Partido - Héroe del Trabajo

スペイン出身のユニットによる初のフルレンス。邦題は 「政党の鉄則」 。同じノイズでも上のナースとは趣を180度変えたインダストリアル/パワーエレクトロニクス。工事現場の騒音をそのままサンプリングしたかのようなガチムチのハードコア・ノイズが執拗に反復される、これぞノイズならではの嗜虐的快楽に満ちた内容です。おそらくクラウトロック勢からの影響も大きいと思われるミニマリズムの恍惚、そして最大限の音量により抑圧から解放されるカタルシス。まさに男の一枚です。



Esplendor Geométrico - El Acero Del Partido I




梶芽衣子梶芽衣子のはじき詩集」

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1973年発表の2作目。これジャケットだけでも100点満点ですね。ぼく LP 盤は持ってないんですけど、 LP サイズでコレ見て一目惚れしないやついるの?って思いますね。国内外問わず役者として未だに根強い人気を誇る梶さん。歌手としての彼女も最高です。まあ言わば当時の演歌スレスレな昭和ムード歌謡なんですが、その端正な歌声に宿る情念の深さが半端じゃない。夜の街灯に照らされてギラリと放つ鋭い眼光は、確実に男も女も一撃で貫く格好良さ。むしろ今聴いた方が伝わる部分が大きいはず。



Meiko Kaji - Onna Hagure-uta (1973)




大陸男対山脈女 「PERFECT HELL」

PERFECT HELL

PERFECT HELL

特撮だか日活だかよく分からないバンド名ですけども、吉田達也が中心となって結成された大所帯バンドの1993年作品。ここでの吉田氏は珍しくベースを担当していますが、中身はやはり彼らしい怪奇な変拍子フレーズが満載の爆裂プログレッシブロック。ただこのバンドでは Boredoms に端を発する関西ノーウェーブ・アンダーグラウンドらしい猥雑さ、頭のネジが数本ブッ飛んだコミカルな勢いが辣腕テクニックとともに溢れ出していて、聴いていてとても愉快な心地になれます。勝井祐二も参加。



Tairikuotoko vs Sanmyakuonna - Takion




Stina Nordenstam 「And She Closed Her Eyes」

And She Closed Her Eyes

And She Closed Her Eyes

スウェーデン出身のシンガーソングライターによる1994年発表の2作目。 Mew の作品にゲスト参加していたりでカルト的な人気は現在でも高いでしょう。独特の舌足らずなウィスパーヴォイスは所謂ロリータ的な可愛らしさ、あるいはコケティッシュというわけではなく、澄み切った透明感と同時にエキゾチックな神秘性を纏ったもの。フォークやジャズを消化してアンニュイな翳りを帯びた楽曲の中で、彼女の声は密やかながら凛とした輝きを放ち、ノスタルジックな寂寥に浸らせてくれる。 「Crime」 は90年代の大名曲。



Stina Nordenstam - Crime




mana 「common multiple」

common multiple

common multiple

Mana様ではありません。関西出身の5人組による2作目。アンビエントエレクトロニカの立体的な構築性をメインとしつつ、そこへ生音によるポストロックやダブ/レゲエ要素も混ぜ込み、レイドバックしたグルーヴとチルアウトの心地良さが緩やかに渦を巻く前衛的サウンドスケープ。微睡みと覚醒、水の冷たさと人肌の暖かさの絶妙なバランスが不思議と心地良い。2002年の時点で日本でもこんな密度の濃い音が完成されていたのかと思うと何だか妙に感慨深いですね。この時期だと BOaT 「RORO」 とも同調してたのかも。中西俊夫リミックスも収録。




Kayo Dot 「Coyote

COYOTE

COYOTE

US 出身、 Toby Driver を中心とする大所帯バンドの4作目。出自としては一応メタルということになるのでしょうが、様々な管弦楽器を駆使してインプロヴィゼーション的な要素も多分に含んだ音楽性は、メタルに限らずあらゆる全ての音楽ジャンルによるカテゴライズを拒絶しているかのよう。ドロドロに融解した不定形のアンサンブルは聴き手の神経という神経を逆撫でし、圧倒的な質量を持った音の迷宮へと誘う。話によると終末期の重病を抱えた親友に捧げられた作品とのことで、表題の船が浮かぶのは彼岸と此岸の狭間か。来年初来日。



Kayo Dot-Calonyction girl




BACTERIA 「HATE ALL」

HATE ALL

HATE ALL

80年代半ばより形態を変えつつも活動を継続している日本のスリーピース。悲しいほどに名は体を表す。メタル、ハードコア、ノイズ、インダストリアル、シューゲイザー等々、とにかく鼓膜を潰すことに長けた音楽性を貪欲に取り込んだ、エモーショナルな爆音の極みがここにあります。 NARASAKI マスタリングによる意図的にひしゃげまくった音像は彼らの本質をより一層浮き彫りにしてる。全てを憎しみに捧げることで限界を超えようとする、ある人間のドキュメント。



bacteria : hate all