agraph「the shader」

牛尾憲輔によるソロユニットの、5年3ヶ月ぶりとなる3作目。


今まで彼の外仕事にしか触れていなかったもので、初めて覗いたオリジナル作での素顔は鮮烈なものでした。ピアノ音の多用により全体的な印象はメロウ。それも行き場のない哀しみやノスタルジックな感傷を纏った、鋭利なまでの冷たい美しさが直感的に聴き手の琴線へと触れてくる。しかしそれと同等に存在感を放つのが、様々なシンセやベース音が集積/収斂された密度の濃いテクスチャー、そして不規則なカットアップを施された歪なリズムパターン。何かひとつの明確な主旋律があるというよりも、種々のテクスチャーとリズムの多面的な連結によってメロディを生み出していくような、細部まで緻密に構築されたサウンドが圧倒的な質量を持って迫る。多くの音色を詰め込みつつも根底には常にダークな静謐が潜み、繊細でありながら時にはノイズ一歩手前まで膨張して野蛮な表情を見せたり。最近の Arca や OPN といった尖鋭たちと共振する部分も多くあるだろうし、個人的には Fennesz 、あるいは Steve Reich なんかを思い出しました。用いられる実験的手法の全てがエモーションの発露へと向かった、実にイマジナティブな傑作です。

Rating: 8.5/10



agraph - greyscale (video edit)