Cicada「Farewell」

Farewell

Farewell

台湾出身の5人組による、初期楽曲の再録コンピレーション盤。


ポストクラシカル、と言うよりこれは純粋な現代音楽/チェンバーミュージックに近いのでは。弦楽隊とギター、ピアノのアコースティック楽器のみで構成され、音響処理やエレクトロニクスなどの装飾はほぼ皆無というシンプルな内容。主旋律にはポップス的で馴染みやすい感触が表れていますが、楽器本来の響きを大切にした演奏からは豊かな呼吸が感じられ、さらりとしつつも目一杯の憂い、感傷を含んだ濃密なムードは所謂イージーリスニング的な、癒し系の BGM とするにはいささか主張の強いものではないかと。序盤「…till the day we meet」「Pieces」などは麗らかな日の午睡を誘う心地良さがあり、中盤「No Words」「Breakaway」では秘めていた感情の揺れがコップから零れ落ちるように溢れ、終盤「What do I do?」「Here We Are!」で再び穏やかで内省的な視線へと収束していく。言葉にすると少々陳腐になってしまう気もしますが、聴き手の頭の中にある濁りを綺麗に洗い流し、聴き終わった後の部屋の静けさ、窓から覗く何気ない風景の美しさに気付かせてくれるような、実に叙情的/叙景的でニュアンスに富んだ内容です。

Rating: 7.5/10



Cicada〈湖面的盡頭〉Lake's End (Quintet)