Galileo Galilei "Sea and The Darkness" Last Tour 2016 @ 神戸VARIT.

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さよならを告げに来たぜ。


とは言うものの、不思議な心地のするライブでした。会場内にはメンバーへ向けた大きな寄せ書きが飾られていたり、尾崎雄貴本人の口から解散に当たっての想いを告げる MC があったりもしましたが、感傷的なムードや終末に向けての切迫感というのは、正直さほど感じなかった。それはまあまだツアーの中盤だからというのもありますが、メンバーがすでにこれからの活動に向けて、先のステップを見通しているからかもしれません。彼らはツアータイトルでもある最新作の世界観の表現のみに徹し、あくまでも現在進行形のアティテュードを提示していました。別に最後だからといって特別な試みは何もない、それだけが今の自分達のやるべき責務だと言わんばかりに。


正規メンバー3人にサポートギター2人を加え、トリプルギター編成を組んだ今回のステージ。演奏が始まってまず思ったのはそれぞれの音の細やかさ、美しさでした。ギター3本の厚みがあるにも拘らず音全体がグシャッと潰れることなく、それぞれの音が密接に繋がり、暖かく包み込むような完成度の高いアンサンブルを構築していました。本編のセットリストは「Sea and The Darkness」をそのまま曲順通りに再現するというもの。ほとんど MC も挟まずにテンポ良く進行していたため、ジャスト1時間程度で本編が終わってしまったのですが、これこそが自分達のやるべきこと、それ以上も以下もないという潔さはとても美しい。「ウェンズデイ」の淡い狂気、「恋の寿命」の振り切れない遣る瀬なさ、「ブルース」の虚無感。そこにはバンドの終焉という物語が介入する余地はなく、むしろそのような情緒は自ら跳ね除け、ただ純粋に楽曲の良さを噛み締める、本来在るべきライブがそのままの形で遂行されていました。


アンコールではようやく過去の楽曲が披露されましたが、代表曲らしい代表曲は「青い栞」のみ。他では雄貴のみの弾き語りによるカヴァーも演奏されるという、これもまたラストらしからぬ通常営業。リラックスしたメンバーからのトークも聴けましたが、それを聴く限りではやはり、彼らには悔しさや歯痒さのようなものは見当たらない。むしろサッパリしすぎているくらいサッパリしたもので、不器用ながら丁寧に言葉を選んで語るその裏には、決して悲観することはない、そのうちもっと良い音楽を届けるからついておいでよ、とでも言わんかのような平熱の表情が見てとれました。こう感じたの自分だけかな。


何はともあれ、彼らはまだ20代半ばという若さ。これからの道は長く険しく、予想もしない方向へと曲がりくねっているはず。その道を行くにはおもちゃの車ではちょっと厳しいということでしょう。良い車に買い替えて帰還してくれるのを気長に待ちます。


<セットリスト>
1. Sea and The Darkness
2. カンフーボーイ
3. ゴースト
4. ウェンズデイ
5. ベッド
6. 鳥と鳥
7. 燃える森と氷河
8. 日曜
9. 恋の寿命
10. 嵐のあとで
11. ユニーク
12. ブルース
13. 青い血
14. Sea and The Darkness II (Totally Black)
(アンコール)
15. 夢に唄えば
16. くそったれども
17. The Book of Love (The Magnetic Fields)
(ダブルアンコール)
18. ハローグッバイ
19. 青い栞