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成山剛「novelette」

novelette

novelette

sleepy.ab のヴォーカリストによる初ソロアルバム。


ロックバンドで快活な動的表現を見せた後にソロワークで歌を意識した静的表現へと移行する、というのが通常の流れだと思いますが、彼の場合に限っては違います。様々なアコースティック管弦楽器を駆使し、ささやかなエレクトロニクスも交えたバロックポップ・サウンド。その複雑に入り組んだアレンジは決して歌をぼやけさせるものではなく、むしろ歌と演奏が濃密に溶け合っていたバンド本隊よりも歌の輪郭を浮かび上がらせており、彼なりの「動」、実験的でアグレッシブな意志を感じます。幻想的な美しさの中に何処か歪なダークネスを孕み、心地良い陶酔と同時にはっきりと覚醒を促す、優しい悪夢のような楽曲群。中盤「コペルニクスの夢」「エトピリカ」になると特にその毒っぽさが増し、それこそ「メトロポリタン美術館」的な可愛らしさと薄ら寒さの共存した感覚に思わずゾクゾクくる。また終曲「in the pool」は穏やかなフォークソングとなっていますが、表題通り水の底へと身体を任せて沈み行くような、濃密な浮遊感が8分に及んで展開される、そこにはやはり優しさの裏側に死の匂い。 sleepy.ab の核、には留まらない面白さがあると思います。

Rating: 7.4/10



成山剛『ladifone』