BES「UNTITLED」
- アーティスト: BES
- 出版社/メーカー: GUNSMITH PRODUCTION / BLACK SWAN
- 発売日: 2016/04/13
- メディア: CD
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そもそもヒップホップは BPM の抑えられたルーズなグルーヴを肝とするものですが、その中でもこの作品は特に、鉛を引きずって歩くような重苦しさが印象的。どの曲にも共通するのはリズムパターンがシンプルなぶん、一音一音の存在感がソリッドに際立った攻撃的ビート。BES のラップはそのドス黒いトラックにねっとりと纏わりつき、明確な言葉をズシズシとボディブローのように捻じ込んでくる。シリアスな切迫感を突き付ける曲はもちろん、メロウな優しさを醸し出す曲でもその根底のドープさは変わっていません。そして歌詞のテーマは一貫してドラッグ/マネー。トリップのもたらす中毒的快楽、それに伴うサバイバルの駆け引き、冷凍都市 TOKYO の闇。完全アウトローの目線から紡がれた言葉に何を感じ取るかは人それぞれですが、個人的には作品全体から強烈な「虚無」を感じました。それは別に内容がリアルじゃないというわけではなく(むしろ現在も彼が服役中という事実だけで十分リアルですし)、むしろ強烈にリアルだからこそ、ドラッグで雁字搦めになった男の姿には虚無感や遣る瀬無さ、物悲しさを禁じ得ない。これもひとつのストーリー。
Rating: 8.0/10