GOMESS「情景 -前篇-」

情景 -前篇-

情景 -前篇-

静岡出身のラッパーによる、1年ぶり3作目。


GOMESS の存在は高校生 RAP 選手権で初めて知って、その時のパワー重視な威勢の良い即興ラップがとても印象に残っていただけに、その後のフリースタイルダンジョンで再度彼の姿を見た時は良くも悪くも衝撃的でした。10代の頃よりさらに内省的でナイーブな姿の彼は、様々なことで思い悩みすぎて精神的に追い詰められてないかという、何だか親の心境になってしまったものです。この作品で彼はラップというよりポエトリーリーディングの手法を用い、低くくぐもった声で吐き出される不安、失望、自己嫌悪の言葉の数々。ただそれは単なる後ろ向きの呪詛ではなく、まだ見えない希望へと救いの手を伸ばそうとする青い痛み。またゲストにはモデルやグラビアアイドルなどの決して器用ではない歌/声を起用したり、トラックもピアノの音色をフィーチャーしたシンプルなものだったりと、所謂ヒップホップの様式からは随分と逸脱し、ジュブナイルのみが持つ繊細な感情の刃、その生々しさを打ち出すことに主眼が置かれています。この実験的な内容は確実に好き嫌いを分けるかと思いますが、どちらにせよ聴き手に静かに切り傷をつけるはず。

Rating: 6.7/10



GOMESS / Fake (映画「Heavy Shabby Girl」劇中歌)-MV EDIT-