Marissa Nadler「Strangers」

Strangers

ワシントン出身のシンガーソングライターによる、2年3ヶ月ぶり7作目。

プロデューサーは前作に引き続き Randall Dunn 。リッチな奥行きのある音響空間の中、今回も彼女ならではのホーンテッド・フォークは健在です。ただ今回は従来のアコースティックギターやピアノに加え、種々のシンセ、バンドサウンド、ストリングスなどの装飾が目立ちますね。重層的なアンサンブルがドラマチックな感情の波を生み出す「Katie I Know」、シューゲイザー／ドリームポップへと接近した幻想的な浮遊感を醸し出す「Hungry is the Ghost」、オルタナティブなロックサウンドとヴォーカルの優しい狂気がディープな化学反応を起こした「Janie in Love」など、音数で空間を埋める方向へと向かったアレンジは、ある種本来的な「ゴシック」のイメージへと真っ当に進んだようにも見えます。楽曲が多彩になっても全体から受けるイメージは相変わらずモノクロのままだし、真綿で首を絞めるようなホラー感は助長されるばかり。もはや何か深い業を背負ってるのかとも思えるくらい、彼女の芯にある表現は多少の脚色を受けたくらいでは揺るぎません。個人的にはシンプルな楽曲の方が緊張感が際立っていて好みかなとも思いましたが、納得の内容ではあります。

Rating: 7.3/10

Marissa Nadler - All the Colors of the Dark (Official Video)