小林うてな「VATONSE」

VATONSE

VATONSE

長野出身のミュージシャンによる初のソロ作品。


先日初のアルバムをリリースした D.A.N. にもサポートとして関わっている彼女。楽曲を構成する主要素はシャープに研ぎ澄まされたエレクトロニクスと、クワイアの聖性を秘めた言語不詳の多重ヴォーカル。スロウに抑えられた BPM でファットなダンスグルーヴを醸し出しながらも、洗練されたポップネスを見せていた D.A.N. よりさらにフリーキーで実験的、場面によってはややカオティックな様相すら見せる自由度の高さが印象的です。「ILA」ではズシズシと迫る不穏なダークネスがインダストリアルの要素を感じさせたり、「REBINGA」でのトライバルなリズムによる呪術的な妖しさ、「MERA」の後半トランスへと雪崩れ込む展開も何だかシャーマニックな凄味がまず前に立ち、まるで不気味な怪物のようにグネグネと形を変えていくサウンドに圧倒される。最近の若手インディバンドよりもむしろハチスノイトのようなアヴァンギャルド勢に繋がる音楽性。予想以上のディープさと無機質さでなかなか面食らうのですが、この実験性が何かしらのカタルシスに結びついてくれれば凄いことになりそうな予感はする。現時点ではまだ習作という印象ですね。

Rating: 6.7/10



EN - Utena Kobayashi