SOFT BALLET「FORM」「SYMBIONT」「MENOPAUSE」
- アーティスト: SOFT BALLET,遠藤遼一,藤井麻輝,森岡賢
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 1995/04/21
- メディア: CD
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前作「INCUBATE」が SOFT BALLET としての集大成的な内容だっただけに、そこから次の段階に移るのは困難を極めたのではないかと。ブレイクビーツの導入や歪んだギターサウンドの増加によりデジロック的質感が増加。その一方でサビの一点突破的なカタルシスではなく、曲の始まりから終わりにかけてジワジワと熱がクレッシェンドしていく構成が目立つ。例えば初期 The Chemical Brothers や Boom Boom Satellites などと同調する部分が少なからずあり、以前の「MILLION MIRRORS」とはまた別の意味で実験的サウンド志向な作品となっています。従来のソフバらしさで安心できるのは冒頭「YOU」「PHOENIX」くらいか。アンビエント的な浮遊感も多く含んでドラッギーな心地良さが充満する「RIDE」や「LAST SONG」など、95年という時代を考えるとシーンの流行に対する嗅覚の鋭さを感じるし、その上で彼ららしい独自性も十分にある。ただ停滞することを良しとしなかった彼らの誠実さは、ともすれば音の裏側にある種の重み、痛みとしてこびり付いているような気もします。この作品を発表した後にバンドは一度解散。
Rating: 7.6/10
- アーティスト: SOFT BALLET
- 出版社/メーカー: イーストウエスト・ジャパン
- 発売日: 2002/10/23
- メディア: CD
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さすがに7年も経てばエレクトロ・ミュージックの流行も機材も様変わりしてるだろうし、バンド活動休止中にソロキャリアを積んでいた各メンバーのアウトプットだって変わってくる。再生して飛び込んでくるのはますますプリミティブなパワーを発散させる遠藤遼一の野獣さながらの咆哮。バンドサウンドとエレクトロニクスを完全に同じ比率で融合させ、よりダイレクトな快楽を伴った「BIRD TIME」、この勇猛果敢な姿はどうだ。中盤以降はエレクトロニカ/インダストリアルの低熱な実験性も目立ちますが、全体的には歌モノへの回帰意識によってバンドのニュータイプをきっち提示しています。作詞作曲のクレジットは全て SOFT BALLET で統一され、ジャケットは3人ぞれぞれの特徴を際立たせたヴィジュアルの融合。以前とはまた違った形で有機的なコラボレーションが成されているということを象徴しているかのよう。そしてここにはメッセージも在る。「僕等は心を震わせて/時の流れを泳いでく」「さあみんなで乗ってこうぜ/銀河のパルス浴びながら」。ポジティブなヴァイブスを携えて彼らは帰還を果たしたのでした。
Rating: 7.8/10
- アーティスト: SOFT BALLET
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2003/10/29
- メディア: CD
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最後の表題が「閉経」というのもある意味彼ららしいと言うか何と言うか。しかし内容は復活後2作目ということで体もこなれてきたのか、外向きのパワフルさと内向きのディープさ、双方のベクトルをさらに伸ばした充実の内容です。地獄の蓋が開いたようなノイズインスト「Nirvana」からソフバ流ミクスチャーロック「Heleben Sahar」へ、彼岸の先を映したような観念的描写にゾクッとくる「Ascent」からリビドー脈打ちまくりの「Realize」へ、聴き手を激しく鼓舞するパッションに満ちた「Bright My Way」から皮肉と狂気がグルグルと渦を巻く「Incoherent And Confused (full of bombast)」へ。曲が変わるたびに方向性もガラリとシフトし、3人の作風が水と油さながらに1枚の中に共存した状態。その大きな落差ゆえのダイナミズムは彼らのカタログの中でも特に極端なもの。ただこれだけ各人がやりたいようにやってても、全体が揃うと SOFT BALLET という一本の線が不思議と浮かび上がってくる、この力技は果たして計算なのか偶然なのか。最後に至るまで変容を繰り返し、レコード会社の契約を消化したところで彼らはまたあっさりと終了してしまいました。
Rating: 8.3/10