FUJI ROCK FESTIVAL '16 1日目

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20周年おめでとうございます。自分としては9回目のフジロックです。もう9回目ともなると序文も書くことないよ!曇ったり晴れたりの割と過ごしやすい天気でした。以下感想をつらつらと。


BOREDOMS @ GREEN STAGE

帯のタタキなんかで「これはもはや○○(バンド名)というジャンルだ!」みたいなクリシェをよく見かけますが、実際にその称賛が当てはまるのはボアダムズくらいのものでしょう。何故ならボアの音楽は影響元を辿り、構成要素を微分していくという作業が容易には出来ない。ポストロック+アフロビート+トランスという風にも無理矢理言えるかもしれませんが、それらを組み合わせただけでボアの持つ魅力を十分に形容してるとはとても言えない。しかもライブを見るたびにバンド構成が変容してるから尚更。この日も今までとはまた一味違った試みで我々を驚かせてくれました。

ネジ型の長い鉄棒をドラムセットの周囲に設置し、それをスティックで擦ったり打ち鳴らしたりすることで、まるで雅楽のような奇妙な浮遊感、緊張感を漂わせる。またおそらく自作のカオスパッド風シンセや、縦に置いたウーファースピーカーに食器や灰皿などを放り込んでメタルパーカッションとして活用するなど、以前のセブンナーに変わる新要素をフルに活用しつつ、EYヨの主導によって大きなエネルギーの塊が鎮まったり激しく荒ぶったりを繰り返す。晴れ渡った真昼の空の下で、また新しい宇宙がビッグバンを起こすまでの過程。やはりボアは音楽を聴くというより、音楽を含めたその場の空気感を受け止める、ひとつの「体験」でした。すっかり圧倒されっぱなしのまま気付いたら60分が経過してた。とんでもないオープニングセレモニー。


KOHH @ WHITE STAGE

周囲のハイプのせいもあってか、音源を聴いただけではその楽曲、個性というものに疑問符が浮かびまくりだった KOHH 。結論から言うと、この日のライブで見方が180度変わりました。完全に打ちのめされた。

Nirvana「Rape Me」を丸々 SE に使い、曲が終わる頃にようやく現れた KOHH は完全に目が据わっていました。気合い十分でステージに臨み、全身を大きく折り曲げて放たれる「Die Young」の絶唱。そこから雪崩れ込むように「Living Legend」へ。序盤の方で早々に「飛行機」を披露した以外は、彼のヘヴィサイドをメインに打ち出した完全攻撃モード。ステージの端から端へと忙しなく跳び回り、身体を振り絞る様にして言葉を吐き出し、オーディエンスを強烈に惹きつけていく。「Dirt Boys」では Dutch Montana と Loota 、「結局地元」では Y'S と共に地元の北区王子の友達まで乱入させるなど、もはや KOHH の身内含めたチームの旗揚げ殴り込みといった様相。ハードコアな過去や多くの繋がりを手に入れた現在、その生き様のすべてを纏めて生々しく突き付ける KOHH の気迫に終始興奮させられっぱなしでした。そのエナジーは最後まで萎むことなく、「Business and Art」で不穏な空気を撒き散らして終了。このライブでようやく彼の魅力が掴めました。強烈なカウンターパンチだった。


Suchmos @ WHITE STAGE

株急上昇中の若手筆頭サチモス。昨年の MINAMI WHEEL でもライブを見ていたのですが、やはり彼らの音楽性には野外の方がずっとよく似合う。レイドバックしたファンクグルーヴ、ソウルフルな歌声で多く集まったクラウドに緩やかなさざ波が生まれる。メンバー達はこの時を待ち望んでいたと言わんばかりに楽しそうな表情を見せ、生き生きとした様子が実にフレッシュ。ただセットリストは敢えて「STAY TUNE」を外すなど、多少ツッパった部分があったのかもしれません。少しばかり全体の曲順にチグハグさがあったように思う。ただ彼らはまだまだ広い地平を目指しているようなので、そのうち良い意味でのベタさも受け入れるようになるのでしょう。


The Internet @ WHITE STAGE

OFWGKTA では DJ を担当していたフィメールシンガー Syd tha Kid 率いる6人組。音源は聴いたことがなくて、バンド名から勝手に前衛的なエレクトロニカかと想像していたんですが、圧倒的に生のグルーヴがグイグイ腰を引っ張っていくファンク R&B でした。ヒップホップ色も割かし強く、場面によってはバウンスやハンズアップを促すこともありましたが、まずはその洗練されたアーバンソウルの美しさがスッと染み入る。Syd の澄み切った可憐なヴォーカルは手練れの演奏に見事な華を添えており、DJ よりも完全にこっちが本職だろうというほどの説得力。常に物憂げな目線を流しながら、蠱惑的なエロティシズムを湛え、クールな雰囲気の中へと没入させていく。ただメンバーはポケモン GO のリリースに合わせてピカチュウのTシャツを着てたり(笑)、良い意味で落ち着き過ぎないラフでやんちゃな面もあったりして、その辺の敷居を上げ過ぎないバランスも面白かった。その音楽性や、ステージセットがほとんど同じというのもあって先の Suchmos とどうしても比較してしまう。個人的にはこちらに軍配。


Lee "Scratch" Perry @ FIELD OF HEAVEN

今年で御年80歳を迎えるジャマイカの巨匠。さすがに今回を逃したらもう見れるかどうかという感じなので、敢えて James Blake を蹴ってこちらに来ました。ステージには何本ものキャンドルとお香。写真で見ていた通りのブッ飛んだファッションでヨタヨタと現れ、深い酩酊を誘うレゲエ/ダブの心地良さに合わせて、ほとんど気ままにポロポロと歌う御大。しかし弱々しい印象はなく、どちらかと言うとすでに酒かアレかでキマっているのでは…という、新手の酔拳のような得体の知れないグルーヴを体現していました。そうなったらこっちもアレ…はないので酒飲んで意識をふわふわ飛ばしながら見るのが吉。こうして気ままに演奏を眺めているとフジロックにまた戻ってこれたなあという実感が今更ながら強く沸いてきて、まあとにかく気持ちの良いものでしたよ。どの曲も区別がつかなくて同じように聴こえたけど。


Sigur Rós @ GREEN STAGE

3年前の単独公演以来のシガロス。以前にもライブを見ているので予測してはいましたが、もはや他の一切を寄せ付けることのない、すっかり孤高の境地へと達していました。昔から彼らが突き詰めているポストロックの轟音表現、その中でも特に幻想的、スピリチュアルで荘厳なムードを打ち出したシリアスな楽曲群。その大きな音の波で数万人のオーディエンスを飲み込んでいく、化物じみた演奏を終始続けていました。

エレクトロニックな質感を強めた新曲「Óveður」で始まり、過去のアルバムからバランス良く選曲されたセットリスト。時には天上から降り注ぐ祝福のように、時には地を割って噴き出してくる惨禍のように、光と闇がダイナミックに交差。清らかで重厚な楽曲の連続で身体が押し潰されそうになる心地。しかしひとたび曲が始まれば最後まで目を逸らせない強烈な磁場が発せられる、この有無を言わせない凄味は流石の一言。特にボウイング奏法で独自の音響を構築する Jónsi の神々しさよ。欲を言えば「Gobbledigook」のようなポップ曲も演ってほしかったんだけど、やっぱりこの流れの中だと浮いてしまうか。何にせよメインステージのトリに相応しい貫禄でした。


以上で初日は終了です。ベストアクトは悩むけど、自分の価値観をブチ割ってくれたという点で KOHH 。明日に続きます。