FUJI ROCK FESTIVAL '16 2日目

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フジロック2日目です。この日は一日中カラッと快晴。日焼けで死にそうになってました。


踊ってばかりの国 @ FIELD OF HEAVEN

神戸出身の4人組。昔から音源は聴き続けていたけど、ライブはようやく初めて見た。1曲目「世界が見たい」からすでに彼らの色が全開。50~60年代頃のオールディーズ、サイケデリック、または昭和フォーク歌謡の要素がドロリと溶け合い、牧歌的で人懐っこいけれど一撮みの毒っぽさも効いたロックンロール。下津光史は最初から上半身裸。気持ちの良い笑顔を見せながら大きく体を仰け反らせたりでテンションの高さをアピール。ギターの林宏敏は寡黙な表情ながら、長尺にわたるギターソロを情感たっぷりに弾き倒し、アンサンブルの持つ熱量をグッと底上げしていく。彼らを知った頃から下津氏以外のメンバーは皆交代してしまっているのですが、おそらく今のメンツが最も良い状態なのかもしれませんね。過去のアルバムからバランス良く選曲されたセットリストは、彼らの根底にある主義が昔から常に一貫していることを提示していました。

そう言えば観客からは「おかえり!」という声が飛んでいましたが、彼らの出演は2010年の ROOKIE A GO-GO 以来なのですね。彼らは少ない言葉数の中で「フジロックというフェスが日本にあって良かった」と語っていました。その内には大きな充実感があったはず。


Mark Ernestus' Ndagga Rhythm Force @ FIELD OF HEAVEN

フジロック得意のワールドミュージック枠。ドイツのテクノアーティスト Mark Ernestus がプロデュースする西アフリカ・セネガル出身の土着プレイヤーたち。実際にステージに立つのはそのセネガルの方々のみでしたが、多彩なパーカッションを用いて激しく打ち鳴らされるアフロビートの中に、ガチガチの4つ打ちトランスグルーヴも絶妙に加味されていて、まあとにもかくにも踊る阿呆に見る阿呆という具合。大人数が一丸となったビートのパワフルさとミニマリズムの恍惚は気持ち良いことこの上ない。また視覚的な楽しさも大きくあり。スラリとした長い手足が印象的なダンサーがひとり現れ、そのトライバルビートの上で四肢を激しく振り回して情熱的なダンスを披露。それはエアロビクスの早回しのようであり、何かの宗教的な祈祷のようにも見えて、いつの間にか秘境の謝肉祭にでも迷い込んだのかという錯覚に陥る。あとはそのダンサーが飴ちゃんか何かをばら撒いたり、他メンバーとステージ上でレスリングを始めたり。実にエンターテインメント性も高く、リズム・フォース、強大な力を確かに感じました。

それと途中で観客をひとり、日本の女性客をステージに上げていたのですが、その人が普通にメンバーとセネガルの母国語で会話して、ダンサーとほとんど対等にブンブン踊ってるのには笑った。演奏が終わった後にはそのお客さんに大きな歓声が沸いていたという。何者だったんだあの人?


ROVO @ FIELD OF HEAVEN

フジロック20周年にはチバユウスケ浅井健一電気グルーヴなど過去に何度も出演している馴染みの深い面々が多く揃っており、彼らもそのひとつ。自分としては前に見たのもフジロックでなのですが、その時は自分のコンディションが合ってなかったのか、ちょっと不完全燃焼だった記憶があります。しかし晴れ渡った空の下、良いアクト続きで程良く酒も回ってる今こそジャストのタイミング。ということで悪いわけがないのでした。4つ打ちだったりドラムンベース風だったりと曲毎に微妙な違いはあれど、目指す場所は基本的に同じ。空間的なノイズギターやヴァイオリンが激しく荒ぶり、張り裂けそうなほどに熱を膨張させていく人力トランス宇宙空間。土煙を舞い上がらせて踊り狂うフロア。持ち時間の60分が本当にあっという間でした。


Con Brio @ FIELD OF HEAVEN

アメリカはサンフランシスコ出身の、ホーンセクションを擁する大所帯バンドです。ソウル、ファンク、R&B といったブラックミュージックを咀嚼した歌モノパーティーロック。初見の観客でもすぐさま取り込むパワフルさと多幸感は、彼らが筋金入りの叩き上げ系ライブバンドであることを十分に証明しています。辣腕の演奏陣もさることながら、このバンドはとにかくヴォーカル Ziek McCarter の存在感が尋常じゃない。格闘家か体操選手かというレベルで綺麗に仕上がった筋肉美。それがマントを翻してクルクルとターンを決め、軽やかにステップを踏み、大きな跳躍からの180度開脚連発、果てはステージ上で宙返りも披露するなど、身体能力の高さを駆使したド派手なパフォーマンスに喝采が鳴りやまない。もちろん肝心のヴォーカルも Michael Jackson や Prince 直系のスウィートなハイトーンで歌心抜群。セクシーでいてぶっとい生命力。ここまでスター性に満ち溢れたフロントマンもそうそういないでしょう。しかも彼まだ23歳という若さらしい。完璧超人って実在するんだね…。


EGO-WRAPPIN' @ WHITE STAGE

実はフジロックと同い年、今年で活動20周年を迎えるエゴ。彼らもまたフジロックには欠かせない常連組ですね。今回も GOSSIP OF JAXX を引き連れての臨戦態勢。

初っ端からいきなりの「くちばしにチェリー」、そして続けざまに「BRAND NEW DAY」。キラーチューン2連発であっという間にホワイト全体を掌握。赤いランプを器用に振り回しながらちゃっちゃと聴衆をアジテートする中納良恵の頼もしさよ。アッパーな楽曲でツイストやバウンスを誘発し、「Sundance」や「だるい」ではその大らかな歌声が薄暗くなってきた苗場の空気を濃密なものに変えていく。小さな体からは想像もできないくらいの溌剌としたバイタリティが、今回も変わらずに発揮されていました。そして中盤では新曲も披露。中納さんは長方形のサングラスを装着してヴォコーダーで声色を変え、何だか POLYSICS のようなスタイルに(笑)。ただそれでもエゴ節はきちんと滲み出ていて、思えば彼らはジャズやブルース、昭和歌謡といったレトロ趣味をベースとしながらも、決してそこだけに留まらずモダンなロックスタイルも積極的に取り入れている、強靭な胃袋を持ったバンドだったなと。あと森雅樹は演奏が終わるとすぐさま東京に帰らなければならなかったらしく、Beck を見られないことを寂しそうに MC していたのも、意外なようで妙に納得したり。

そしてラストは「GO ACITON」で再度ブチ上げ、「サニーサイドメロディー」のアコースティック弾き語りアレンジでシメ。王道のセットリストでとても充実していたのだけど、さすがに50分は短すぎるわ。単独行かねばと気持ちを強く持ったのでした。


Beck @ GREEN STAGE

正直言うと全てのアルバムをチェックしてはいないし、あまり熱心なファンというわけではありません。しかしながら初のヘッドライナーとなる今回の Beck のショウは、そんなにわか者でも十分に魅了する、彼ならではの個性を十分に堪能できるものでした。

黒の革ジャンをフォーマルに着こなすスタイリッシュな出で立ちで登場した Beck 。いきなりの「Devil's Haircut」、そして「Black Tambourine」を挟んで早々に放たれた「Loser」。サビでは当たり前のようにシンガロングが巻き起こる。完全にフェス仕様のオールタイムベスト的セットリストです。渋味溢れるブルース、時にはハードロックまで突っ込んだ泥臭いサウンドを鳴らし、その中にヒップホップやエレクトロニカ要素も巧みに融合。中盤ではフォーク/カントリー、あるいはファンク要素なんかも混ぜ込む。それら全てのジャンルが不思議と違和感なく連結し、肩の力の抜けた Beck の歌声によってポップに統一化される。しかも音源ではインディロック的なこじんまりした感覚が強かったのですが、どの曲もしっかりとスタジアム規模に向けて骨組みがビルドアップされていて、かなりどっしりとした重み、歯応えを感じさせるものになっていました。今まで彼のライブを目にしたことが無かったもので、このライブアクトとしての曲の充実ぶりには本当に驚かされた。

そしてアンコールでは派手な白ジャケットへと早着替えを済ませ、ソロプレイ含めたメンバー紹介に David Bowie や Prince のカヴァーを交えるといった遊び心もあり。そこでハッと気付かされた。自分がこの日一番印象的だったのは Beck という存在のカリスマ性でした。端正な顔立ちに洗練されたファッション、何気なくターンを決めるクールな佇まい。それはもう正に David Bowie の持っていたオーラ、ポップスターの系譜に直結するものではないかと。まあ彼は宇宙人や犬にはならないし音楽性も違うけれど、目指すところはきっと近いはず。90分のロングセットを流れるようにスルスルと消化し、観客よりも一足先に帰りの新幹線に向かいましたとさ。


ということで2日目のベストアクトは Beck です。明日へ続く。