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FUJI ROCK FESTIVAL '16 3日目

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フジロック3日目です。結果的に3日間ほぼずっと晴れでした。一部を除いては。


BO NINGEN @ WHITE STAGE

ようやく見れた棒人間。ロンドンに拠点を置く日本の4人組です。もうこのバンドはルックスからして間違いなく格好良いんですよね。全員が顔の隠れるような長髪、細身に合わせたスタイリッシュな衣装。両性具有のセクシーさと不気味さを兼ね備えた佇まいは実にクール。それが最初の一音で鼓膜を貫くような鋭いギターノイズを響かせる。青空には全く不釣り合いの狂気的ポストパンク。フロントマン Taigen Kawabe は長い腕や全身をクネクネと靡かせ、長髪を振り乱しては軽快なフットワークでステージを跳び回る。「この3日間で一番大きい爪痕を残しに来た」という言葉通り、並々ならぬ気合いの入ったヒステリックなサウンド。その言葉と音に呼応するように、前方では激しく土煙が上がりモッシュやダイブが頻発していました。

「DADADA」「Psychedelic Misemono Goya」「Koroshitai Kimochi」など、現在の BO NINGEN にとってベストセレクトであろうセットリスト。いずれもキナ臭い殺気が充満しつつ、その音の中に込められているメッセージは、実は至ってポジティブで力強いもの。今自分がいる場所をグッと踏み付けて、前を向いて自分らしく生きるというシンプルな答え。「Natsu No Nioi」では一転して静まり返った中で Taigen の訥々とした歌が流れ、大ラス「Daikaisei」はちゃぶ台ひっくり返しの破壊的セッションへと突入。ホワイト一発目でありながら、彼らがつけた爪痕は確かに深いものでした。


Deafheaven @ WHITE STAGE

フジの中では一枠あるかどうかのメタル枠。ただ彼らの場合はメタルからシューゲイザー、ポストロックといった幅広い轟音のエッセンスを取り込み、メタルの中でも急進的で美しい透明感を見せるバンドなだけに、フジに呼ばれるのは必然性があるように思いました。

メンバーの中で唯一激しいアクションを見せる George Clarke は全身黒ずくめのタイトなスーツ姿。鋭い眼光でオーディエンスを睨み付け、無言でこちらに手をかざす。「来いよ」と。そして始まった「Brought to the Water」から、やはり堰を切って巻き起こるモッシュの渦。音源では複雑なテクスチャーを構成していたアンサンブルは、ライブだと一層メタルならではの引き締まった硬さ、激しさを増しているように感じられ、やはり彼らの出自は紛うことなくブラックメタルなのだと再確認させられました。その一方で「Baby Blue」では幻惑的なクリーントーンを主としたサウンドで陶酔に浸らせたり、長尺ばかりの楽曲でありながら冗長さを感じさせない構成には改めて舌を巻く。

そしてラストは唯一旧譜からセレクトされた「Dream House」。天高く昇っていく激しさと浮遊感は、意外に真夏の野外にもマッチしていたように思います。彼らもまたアウェイの地で自分達なりのスジをビシッと通して見せました。


はちみつぱい @ FIELD OF HEAVEN

活動45周年ということで再結成を果たした、鈴木慶一率いる70年代フォークロックの伝説。思えば前に鈴木氏を見たのもいつぞやのフジでしたね。60を過ぎてもまだまだ現役!リハーサルからそのまま続けて本編に入り、放たれるのはギター3本、キーボード2本、ドラム2台、さらにペダルスティールまで入った特濃サイケデリックサウンド。中心の牧歌的なメロディは分厚いアンサンブルによって何倍にも熱が高められ、聴き応えバリバリのセッションへと雪崩れ込む様子には思わず息を飲んだ。ブランクなどまるで感じさせない円熟味と刺激。この再結成では逝去したドラマーかしぶち哲郎の代役を長男が務めていたり、きっと単なるバンドメンバーの間柄を超えた繋がりがあるのかもしれません。ひとまず自分としては、鈴木慶一先生が変わらずお元気そうであることを確認できて良かったです。


Robert Glasper Experiment @ WHITE STAGE

米ヒューストン出身のジャズピアニストが率いる5人組。こちらはバンド名の「Experiment」が示す通り、通常のジャズに加えてエレクトロニカやヒップホップ、ドラムンベース要素も加味してジャズの新しい形を模索する実験的プロジェクト、ということです。ただリズムは基本的に全て生。軽やかなタッチでロールし、細かいリズムを難なく流麗に聴かせるドラムのハイレベルな技巧。そこにアーバンに洗練されたキーボード、サックスが加わって流線形の未来を想起させるアンサンブルに。時にはドラムとキーボードのみの即興セッションに突入し、ジャズ特有の緊張感が冷たさの中に熱い火花を生む場面も。そのレパートリーの中には Radiohead「Everything in Its Right Place」、また終盤には NirvanaSmells Like Teen Spirit」のカヴァーまで。レディへはちと分かりづらかったけどニルヴァーナでは大きな歓声が上がってましたね。ラウドな原曲が完全に漂白されてジャズの枠内に組み込まれた、圧巻のカヴァーでした。昼過ぎの心地良いチルアウト。


BABYMETAL @ WHITE STAGE

うーんとですね、鮨詰め状態の人の入りが辛かったとか、そもそもアイドルに対する熱がここ最近めっきり失せてきてるとか、要因は色々あるんですが、もうベビメタちゃんを楽しむには自分の中のモードが違い過ぎた。完全に台本通りのショウビズ感バリバリなアクトは、わざわざフジに来てまで見るもんでもないな…。まあ確かに、世界中の大舞台を踏んできたが故の勇ましさ、完成度の高さというのはありましたけどね。あとここだけ通り雨。


Kamasi Washington @ FIELD OF HEAVEN

この3日間で最後の枠です。ロサンゼルス出身のサックス奏者。この日はツインドラムやグランドピアノなどを従えた9人編成。

すっかり陽が落ち、暗闇に包まれた森の中をミラーボールが照らし出す幻想的なヘブンの雰囲気の中で、彼らの演奏はこれ以上ないほどにマッチしていました。基盤のジャズにファンク、ソウル、そしてクラブミュージックの洗練されたニュアンスも併せ持つアンサンブルは、ダンスの熱狂と涼やかで洒脱なムードを同時に醸し出し、ジャズが本来持っているであろう魅力を最大限に拡張していました。いずれも10分前後の長尺曲が連発されていたのですが、一曲の中で辣腕プレイヤー達の、おそらくアドリブも多く交えられているであろう演奏が、主張の強さと同時に互いの呼吸を合わせるしなやかさで、一丸となって何倍にもパワーを膨れ上がらせる。また曲構成も巧みなもので、ドラム、ベース、ピアノ、フルートと各楽器をフィーチャーしたソロパートを各曲に作り、あるメンバーは自身の音色にじっくり酔わせ、あるメンバーはアグレッシブなプレイで聴衆を鼓舞する。そこには演者と演者のみならず、演者と客の間でもコミュニケーションが生まれ、全体の流れを実に豊かなものにしていました。

今年は先述の Robert Glasper であったり、dCprG や SOIL & "PIMP" SESSIONS も出演していたりと、裏テーマとして「ジャズ」がありました。大御所は自身の味を守り、若手は新たなスタイルを模索する。所謂ブラックミュージックの素養こそが、近年のオルタナティブなアーティストにとって重要なトレンドなのかもしれません。その中でも生粋のジャズ出身である彼の才能は特別なものだと痛感させられました。宇宙的とも言えるほど壮大な、それでいて個々の熱い血も確かに感じさせる、素晴らしいアクトでした。


ということで3日目のベストは Kamasi Washington 。本当はこの後に Battles や電気グルーヴも控えていたのですが、体力やら交通関係やらを考えてここで切り上げ。来年はもうちょっと欲張って見れるように頑張りたいです。今年もお疲れ様でした。