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Hostess Club Osaka Presents Deerhunter / Savages @ なんばHatch

LIVE

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昨年から始まった SUMMER SONIC と HOSTESS CLUB のコラボイベント、その大阪編でございます。


キャパシティ2000のなんば Hatch に対して観客300程度。当然2階は封鎖、1階もフロア中央の PA より後方はカーテンで遮断という。なんば Hatch には何度も来たことがありますが、正直こんな状況は初めてでした。昨今の日本における洋楽事情の厳しさをそのまま可視化したようなこの集客数には、さすがに落胆を禁じ得ない。しかしながらこの日の2組のパフォーマンスは広いステージでの見せ方をしっかりと熟知したもので、客側もそれに呼応するように熱い盛り上がりで返していた、逆風を物ともしないような充実した内容だったのでした。


先行は Savages 。黒を基調としたシックでタイトな衣装に身を包み、真っ暗闇の中にゆらりと登場した4人。1曲目「I Need Something New」の冒頭、Jehnny Beth の面妖なアカペラが響いた時点で彼女らの持つオーラが空気を冷たく引き締める。基本的に白のみに統一されたシンプルな照明、しかし楽曲とシンクロした巧みなライティングとストロボフラッシュの効果的な挿入が楽曲の持つダークな緊張感を引き立てており、演奏のパワーを何倍にも膨れ上がらせていました。そして続けざまの「The Answer」、「Hit Me」「T.I.W.Y.G.」のファストチューン連打など、ポジティブパンク直系の殺気だったサウンドを立て続けにバリバリと拡散。それは無機質でありつつ、しなやかで蠱惑的な印象も残す、強い美学に貫かれたパンクロック。


淡々と演奏に徹する楽器隊の前で、ヴォーカル Jehnny の存在感はやはり際立っていました。引き締まったスキニーなスタイルでゆらゆらと軽いフットワークを見せ、鋭い眼光でフロアをキッと睨み付けては不敵にアジテートする。まるでボクサーのようなキレのある仕草はフロントマンとしての華を強く感じさせるものでした。中盤ではステージを降りてクラウドへダイブし、そのまま客に足を支えられながら歌うといった型破りな場面も。そのアグレッシブなパフォーマンスは確実にパンク/ハードコアの血が通ったものであり、同時にゴシック・アートとしての気品と美しさも忘れない、肉体と神経を一遍に刺激してくるような感覚。これはある種の理想ではないかと。終盤では少しばかりの優しさを感じさせる Suicide「Dream Baby Dream」カヴァーからの「Adore」、そして長尺のトランシーなセッションが強い興奮をもたらした「Fuckers」で終了。ジャスト1時間、彼女たちの音楽はすでに異様な完成度に仕上がっていました。


対して後攻の Deerhunter 。前回に見た時はいつぞやのサマソニでしたが、その時とは印象がまるで違っていて驚かされました。今回は主要メンバー Bradford Cox や Lockett Pundt の他に、キーボード兼サックスやパーカッションも加えた6人編成。スーツとハットでノーブルにキメた Bradford はマイクスタンドを軽快に振り回し、細い身体に似つかわしくない明朗なシャウト。すわ矢沢永吉かと言わんばかりのロックスターっぷり。音源でのローファイなインディバンド感よりも大所帯のカラフルさ、ラフで賑やかなエンターテインメント感。この数年の間に彼らの中でどういう意識変革が起こったのか。ただ元々 Bradford って何処か浮世離れしたトリックスター的なイメージがあっただけに、驚きはすれど決して違和感はない。


セットリストは新作「Fading Frontier」の楽曲を中心に、ここ最近の数作からもチョイスされた優しめの内容。自分としてはやはり「Halcyon Digest」の楽曲に強く反応してしまう。ただ心地良いだけではなく、何処か崩れ落ちそうな危うさも孕んだ「Helicopter」の幻惑的なムード、そして「Desire Lines」のいつ終わるともしれないサイケデリア全開の長尺セッション。Bradford の挙動は以前よりずっと快活で外向きなものになったけど、楽曲は相変わらず内へ内へと潜り込むような陶酔感が強く表れ、このギャップもまた奇妙な味わい。そして本編ラスト「Snakeskin」での爆発力は今回一番のめっけもんかもしれない。ファンキーな躍動感と少しばかりの毒々しさはライブだと一層インパクトを増して響き、今現在のバンドのモードを最も象徴しているように感じました。そしてアンコールは「Nothing Ever Happened」。これもまた長尺に引き伸ばされたノイジーなアンサンブルが脳を揺さぶる名曲。ただ演奏は以前よりパンキッシュな荒々しさも加えられ、やはり現在の彼らはロックンロールへと意識が向いているのだなと。


演出の方向性としては真逆を向いたこの2組、しかし根底では少なからずシンパシーを感じなくもない、実に濃密なアクトなのでした。