悠木碧「トコワカノクニ」

トコワカノクニ(通常盤)

トコワカノクニ(通常盤)

ミニアルバムとしては3年10ヶ月ぶり3作目。


楽器の類は一切使用せず、自身の声のみを使って制作された今作。同じような内容ですぐに思い出すのは Björk「Medúlla」なのですが、あちらとはまた違った凄味がこの作品には備わっています。舌足らずのロリータヴォイスから大人びたスマートで伸びやかな声色など、様々なキャラクターを駆使してハーモニーを空間的に構築。アカペラというアレンジの性質上、音の隙間は大きく開き、テンションはほぼ一定。その平熱な感覚が楽曲のムードをさらにシュールなものとし、ファンタジックな中にもそこはかとなく奇妙な薄ら寒さが潜んでいるような、何とも不可思議な印象を植え付けられます。もちろんビートなども皆無なので、浮遊感どころかすっかり宙ぶらりんの聴き心地。「イシュメル」で確立した彼女ならではの童話風世界観がさらに突き詰められた結果、色味や骨格がごっそり削ぎ落とされた、ある意味悠木碧のミュージシャン活動の極致とも言えます。おそらく従来の彼女のファンでもかなりの数が篩にかけられそうな実験性の高さだし、EP のサイズだからこそ成立してるとも思いますが、他ではそうそう見られない個性が詰まったメルヘンヴォーカル怪作。

Rating: 7.2/10



悠木碧「レゼトワール」Music Video (short ver.)