heaven in her arms「白暈」

白暈 (ハクウン)

白暈 (ハクウン)

2001年結成の5人組による、6年9ヶ月ぶりフルレンス3作目。


今までのダークで禍々しいイメージを刷新するような、白と青のコントラストが印象的なジャケット。その幻惑的なイメージは今作の内容を綺麗に象徴しています。従来のポストハードコア路線を踏襲しつつスラッジ色は後退、そのぶん綿密に練り込まれた音作りで、激しさの中にも複雑なニュアンスを見せるサウンドへと進化を遂げています。8分に及ぶ冒頭のリードトラック「月虹と深潭」から力強く提示するのは、猛吹雪のような激しさと冷たさ、そしてその中から浮かび上がる美しさ。envy のナイーブな切迫感、MONO の壮大でメロドラマチックな悲愴、その上にブラックメタル由来のノイジーに混濁したヘヴィネスも折り重なり、轟音と静寂をダイナミックに行き来しながら苛烈極まりないエモーションを吐き出す。しかしどれだけ激しさが加速度を増しても、アルペジオで奏でられる繊細なフレーズがアンサンブルの中に一筋の光を打ち、最終的に残るのは美しいという印象なのですね。その美醜のバランス感覚が今作では実に冴え渡ってる。10分超でありながら長さを感じさせないクローザー「幻霧」、その最後の一音に至るまで信念が貫かれた力作です。

Rating: 8.6/10



heaven in her arms - 月虹と深潭 (Abyss of the moonbow)