Arca「Arca」

ベネズエラ出身、Alejandro Ghersi によるソロユニットの約1年半ぶり3作目。


Björk との共同作業の中で大きく彼女に触発されたとのことで、今作が初の本格ヴォーカルアルバム。それも全て本人の歌声で、不明瞭なエディットを加えたりすることもせず、彼の歌声はサウンドの中でくっきりと際立ち、楽曲の主役を担っています。トラックは最小限の音数に絞られたアンビエントエレクトロニカ。しかし和やかな印象はまるでなく、そのシンプルさに反比例して空気感はヘヴィ。何かを擦ったり引っ掻くような不可解な音も各所に散りばめ、聴き手にとことん不安や緊張を強いる。その中で揺らめく Arca の歌声はジャズ/シャンソンのような美しさと同時に、それこそ Björk であったり、もしくは Jónsi や ANOHNI などにも匹敵する、ある種怨念にも似た底知れないパワーを感じさせる。歌詞は彼の出自に拘って母国語であるスペイン語で書かれており、正直言って内容を理解することは出来ないのですが、その歌の中に秘められた言霊の凄まじさだけは掴み取れます。これまでの作品でも見せていた辛辣なまでの実験性、その音の迫力をすっかり凌駕する勢いで彼の歌は聴き手を飲み込んでしまう。彼の全貌がついに表れた、納得のセルフタイトル。

Rating: 9.0/10



Arca - Reverie