電車「電車トーマソ」「勉強」「電車英雄」

0'年代の電車 3TITLES

0'年代の電車 3TITLES

大槻 "モヨコ" ケンヂ、石塚 "BERA" 伯広、佐藤研二、小畑ポンプの4人で2000年代初頭に結成され、「30代(当時)の男たちのアングラロマン」をテーマに活動していた電車。発売レーベルが倒産していたとのことでどの音源も幻と化していたのが、何故かこの度メジャーの徳間ジャパンから再発されまして、せっかくなのでここにコンパイルされている3作についてまとめて感想を書きます。今って結局活動は継続してるのか?




電車トーマソ

電車トーマソ

2001年発表のデビュー作。


上にも書いた通りコンセプトが「アングラ」ということで、そっち方面に特化した濃厚な楽曲が揃っています。妙に大仰でアヴァンギャルドな表題曲「電車トーマソ」に始まり、聴いててだんだん心が無になってくる「パーマのブルース」、植物人間をテーマにしたファンクロック「夢見るショック!仏小僧」、猟奇的描写がシュールな哀愁を誘う「喰らわれた女の歌」と、インディーズなのを良いことにギャグもタブーも存分に盛り込んだ、ある意味清く正しいサブカルど直球の内容。オーケンが敢えて「モヨコ」を名乗っている点からも伺えるように、彼の趣向の最もルーツとなる部分に再度スポットが当てられており、それが気心知れた手練れのプレイヤーとともに、あくまでのほほんとしたテイストで表現されているということです。カヴァー曲も筋少や新東京正義乃士といったナゴム勢に加え、常田富士男「私のビートルズ」という選曲には唸らされるものがある。この頃は特撮でも休みの国をカヴァーしてたり、オーケンの中で昭和のフォークロック歌謡(のヤバいやつ)ブームがあったのかな。今聴いても脳ミソが窒息してくる感覚が十分味わえます。

Rating: 8.4/10



アタイばっか




勉強

勉強

2002年発表の2作目。


前作から1年足らずの短いインターバルですが、この間にロックバンドとしての纏まりが一気に増しており、なんだかメジャー感のある仕上がりに。電車流ミクスチャーロック「電車の猛勉強」から真っ当にロックンロールしてる「BAD LUCK MAN」の流れはライブ感のある勢いが逆に意外だったり、無常感に満ちた「OUTSIDERS」や 9.11 の直後に書かれたという「テロルおじさん」にしても、題材はアンタッチャブルながらオーケンのストーリー風詞世界と牧歌的なメロディの良さが嚙み合った佳曲。メンバーそれぞれの趣味的な課外活動とするには随分と力の入った、電車としてのオリジナリティをここで確立しています。まあ中には「妖怪人間ベム」のヴォーカル逆回転カヴァーという本当に不可解な代物もあるんですけどね。それで個人的に一番好きなのはラスト「お別れの背景」。例えば筋少で言えば「生きてあげようかな」や「星座の名前は言えるかい」なんかに通じるような、スッと胸を締め付ける、普通に良い曲。オーケンがこういう曲を演れる場というのも当時は電車だけでしたね。すでにアングラの枠に収まらなくなった傑作。

Rating: 8.5/10



生まれてビックリ団




電車英雄

電車英雄

2005年発表の3作目。


内容はラストライブとなった2004年の渋谷 eggman 公演のテイクを元に、メンバーの編集を加えて再構築したもの。「電車の猛勉強」などはライブならではの荒々しさがよりフリーキーな形で際立たされていたり、リズムが打ち込みに挿げ替えられた「夢見るショック!仏小僧」はほとんどリミックスといった仕上がり。また伸び伸びとしたブルージーなセッションの「人間のバラード」、原曲よりもアップテンポな「テロルおじさん」などではサトケンのグリグリうねりまくるベースの凄さを見せつけられる。このバンドは音楽的にはベラのスタンダードなロック回帰志向と、サトケンのアヴァンギャルド志向のせめぎ合いが独自の味を出していたなと、ここでの演奏を聴いていると改めて実感します。肩の力の抜けた自由さがありながら、大人の本気の遊びというような熱量は常に何処かに発揮されてる。そしてここでの初出は「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」カヴァー。過去にオーケンのソロでもカヴァーしていたのですでに手慣れたものという感じで、オーケンの歌唱も特に伸び伸び。このバンドの特異さが一番強く表れてるのはある意味このアルバムかも。

Rating: 7.4/10



電車 - Bad Luck Man