DJ KRUSH「軌跡」

軌跡

軌跡

1年8ヶ月ぶりとなる10作目。


今作が彼にとって初のラップアルバムということで、招集されたラッパーはベテランから若手まで多種多様。そのいずれもが DJ KRUSH 印のトラックと絡み合うことで奇妙な化学反応を起こしています。徹底してダウナーで霞みがかった雰囲気の中、研ぎ澄まされたブレイクビーツが強い存在感を発揮し、緊張の糸をピンと張る。所謂トリップホップアブストラクト・ヒップホップならではのダークで深遠なサウンドスケープ。その中で OMSB や呂布カルマは元来の持ち味を活かしてトラックの闇をさらに濃密なものに仕立て上げ、チプルソやR-指定はフリースタイルバトルでの印象とは随分と様変わりしたクールなテンションで、ビートの上をゆらゆらと泳ぐようにして言葉を紡いでいく。また 5lack は強烈なベースラインに引っ張られてか普段よりもアグレッシブな印象を受けるのも面白い。ひどく神経症的でアクの強い楽曲にどう対峙するか、その解釈やアプローチの差異が個々によって分かりやすく表れています。ただ最終的には志人が通常営業スタイルで全部掻っ攫ってしまうのですけどもね。アルバム一枚通しての壮大な調合実験は成功していると思います。

Rating: 7.9/10


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