Cornelius 「Mellow Waves」

Mellow Waves

Mellow Waves

約11年ぶりとなる6作目。


前作にあたる「SENSUOUS」や「POINT」は、メロディや構成といった楽曲としての形よりも、音ひとつひとつの質感や定位など、細部の音響に対するフェティシズムを強く感じさせる作品でした。そこから今作では再び、いやもしかすると初めてかもというくらい「歌」にフォーカスが当てられています。特にリード曲「あなたがいるなら」には驚かされた。シンコペーションの嵐、と言うよりも意図的に位相の異なるレイヤーばかりが重ねられたサウンドは、まるで波打ち際のように静かに寄せては返し、中心の何気ない歌を優しく包み込んでいます。近年の Salyu坂本真綾と組んだ外仕事からのフィードバックも多くあったのかと思いますが、これほどまでストレートにセンチメンタルな叙情を見せてくるとは。その他の曲においても過去作から地続きの実験性が活かされてはいるけれど、ここでは明らかにヴォーカルパートを中心として組み立てているため、以前よりも言葉の持つ意味がくっきりと浮かび上がって聴こえるし、ともすれば音の方までもが以前とは違った感情の機微を見せているように感じます。ここがポップスの新たなスタンダードなのか。

Rating: 8.6/10



Cornelius - 『あなたがいるなら』"If You're Here"