Brand New 「Science Fiction」

Science Fiction

Science Fiction

ニューヨーク出身の4人組による、約8年ぶり5作目。


これは少しまずいものを手にしてしまったかもしれない。そもそもは直情的なエモ/ポップパンクを出自とするこのバンド。しかし作品を重ねるごとにラウドな勢いからサウンドテクスチャーの構築へと興味がすり替わっていったようで、この新作ではともすればポストロック的とも言える実験的手法を大きく導入しています。「Can't Get It Out」や「Out of Mana」などではかつてのエモな面影が見られるものの、その歪んだギターもあくまで楽曲を構成する一部分に過ぎず、主幹を成すのはむしろアンビエント空間を展開するクリーントーンだったり、音の鳴りの微細な部分にまで拘ったエレクトロニカ風音響効果。フォークやブルースといった伝統的要素に、吸い込まれそうな奥行きを持った現代的プロダクション、そしてエモならではのダイナミズムが三位一体となった楽曲の味わい深さたるや。そして何より強烈なのは作品全体に蔓延する負の感情の数々。襲い掛かる不安に苦悩し、自分や他人に失望し、「137」に至っては「ナガサキの真似をしよう」とまで零し、それでも救いを切望する。彼らはこの作品で初のビルボード1位を獲得し、2018年の解散を匂わせています。

Rating: 8.1/10



Brand New - "Can't Get It Out"