SUGIZO 「TRUTH?」 「REPLICANTS」

TRUTH?

TRUTH?

1997年に発表された初ソロ作のリマスター再発盤。


リマスタリングの恩恵は音の解像度が気持ちぶん上がったかなという程度ですが、それは原盤の音のバランスがすでに完成の域にまで仕上がっていたことの裏付けでもあるかと。LUNA SEA のアート分野を司っていた彼は、バンド休止期間の中で特にソロ活動に意欲的だった印象があります。ドラムンベーストリップホップといった当時の先鋭に位置していたクラブサウンドを貪欲に取り込み、そこに幻惑的なアルペジオからディストーション・スクリームまで、彼の代名詞と言えるギタープレイを惜しみなく投入。さらに女性ヴォーカル陣や坂本龍一、Mick Karn などの強力なゲストも多数参加した楽曲群は、架空映画の劇伴集のような多彩さを持ちながら、それらは強固な一本の線で結ばれてひとつの壮大な組曲を形成しています。リリースから20年も経てばさすがに経年劣化を感じそうなものなのに、今聴いてもなお楽曲の説得力は薄れず、むしろ他に類を見ないそのオリジナリティはより輝きを増しているようにも見える。それはエレクトロ要素が安易な流行への目配せではなく、彼の内面にある小宇宙を表現するための必須要素として機能しているからでしょう。

Rating: 9.7/10


REPLICANTS

REPLICANTS

1997年発表のリミックス EP 収録曲に未発表曲を加えた編集盤。


こちらは「TRUTH?」の基盤を成していたドラムンベースやヒップホップ界隈のリミキサーが多数集結しており、特にドラムンベースの存在感が強い。稲妻のように走る高速ビートと上モノのスペーシーな広がり、フィジカルな即効性と執拗なリズムパターンの反復から生まれる恍惚。それらは曲の中で渾然一体となり、聴き手の神経を様々な角度から刺激してくる。モノによってはどの辺に原曲の面影があるのか分からないくらい完膚なきまでに改変されているのですが、ダークで実験的、なおかつ耽美的でスタイリッシュな印象はいずれの楽曲においても共通しているため、オール外注のリミックスアルバムとは思えないほど全体の空気感が統一されています。特にその中でも「LIKE A GOLD Le Fou」の雄大な自然を思わせる美しさは思わず息を呑む仕上がり。また今回初出となった「ABSTRACT BEAUTY」はアルバム中1、2を争う不穏なムードに背筋が冷え、「THE SENSUAL KANON」は原曲を程良く保ちながら開放的な爽やかさが付与されているようにも感じ、また新鮮な印象を受ける。「TRUTH?」の世界観を十分に味わうなら今作もマスト。

Rating: 8.9/10