踊ってばかりの国 「君のために生きていくね」

君のために生きていくね

君のために生きていくね

神戸出身の5人組による、約3年ぶり5作目。


この3年の間に半分以上のメンバーチェンジが起こっていますが、バンドの中の芯、つまり全ての作詞作曲を手掛けるヴォーカル下津光史の思想はずっと一貫しています。60~70年代のサイケ/フォークロックを下敷きとし、牧歌的な雰囲気の中にアシッドな毒っぽさを効かせた、ある種伝統的と言えるロックサウンド。この手の音楽性は never young beach や Yogee New Waves などの台頭で最近特に人気が再燃しているように見えますが、それら若手バンドと比べると彼らの音楽は似ているようで違う気がします。ノスタルジックで上品なメロディ、ふくよかな味のある演奏など共通する点は多々ありながら、何処か身を削ぐような生々しさ、エモーショナルで泥臭い人間味が歌や演奏の端々から匂い立っているようで、暖かな曲調とは裏腹の切迫感に思わず惹きこまれてしまう。アルバム後半に入るとブルース、パンク、ハードロックなどの要素も交互に顔を出し、優しさもしたたかさも色濃さを増して賑やかになっていく。曲や歌詞のメッセージに至るまで下津光史という人間の内面が余すことなく投影されたような、光も影も混ぜこぜになった16曲71分の大ボリューム。

Rating: 8.0/10



踊ってばかりの国『メロディ』Music Video (2018)