Arctic Monkeys 「Tranquility Base Hotel + Casino」

4年8ヶ月ぶりとなる6作目。


これまでにもアルバムをリリースするたびに我々の予想から斜め上の音楽性を提示してきた彼らですが、今作はこれまでの変化とは様相が違うように思います。事前にメンバーが公言していた通り、ギターの比重は大幅に後退。代わりにピアノやオルガンなど種々の鍵盤楽器が大きなウェイトを占め、ドラムは全曲で BPM を低く抑えて絶妙なスウィング感を見せる。過去の作品ではブルースやハードロックなど、あくまでもロックバンドとしての力強い骨格を維持した上で方向性を変えてきたのに対し、今回のこのジャズやラウンジといった要素を大々的に押し出した内容は、もはやその骨格すらも解体してしまった、かなりの思い切った冒険ではないかと思います。しかしながら上品なアレンジや豊かなハーモニー、そこから醸し出される雰囲気はラグジュアリーな心地良さとダークな緊張感を同時に感じさせるもので、これは彼らが以前から持ち合わせていたメロディセンスに全く別の角度からスポットライトを当てた結果なのかなとも思ったり。賛否両論は避けられないにせよ、彼らの野心が未だに鎮火していないことを雄弁に語る、非常に興味深い一枚です。

Rating: 7.8/10



Arctic Monkeys - Four Out Of Five (Official Video)