おとぎ話 「眺め」

眺め

眺め

2000年結成の4人組による、約1年半ぶり9作目。


醒めた印象を受ける。元々おとぎ話と言えば「SMILE」などに代表されるような、淡くノスタルジックな青春の情景を描くバンドというイメージが未だにあるのですが、さすがに10年以上もバンドが続いていれば表現も変わる。例えば「魔法は君の中に」「素顔のままで」といったトラックリストだけを眺めていればやはりセンチメンタルな路線なのかなと思いそうになりますが、実際の歌詞を見ると「アーティスト気取ってる君には興味がない」と毒づいていたり、また「HOME WORK」や「純真」では現実からの逃避願望が滲み出ているように見えたりと、言葉の端々から疑念、諦観のような翳りを帯びた雰囲気が仄かに匂う。その一方で青く繊細な感情表現も同列に並び、文学的な丁寧さを心掛けながら、表と裏のどちらも取りこぼしなく書こうとする有馬和樹の筆致はますます冴えを見せているように見えます。楽曲的にはサイケやフォークを消化したオーソドックスなロックへと回帰し、過去作でいう「JEALOUS LOVE」のような目新しさ、また「COSMOS」などに匹敵するようなパワーなどは正直乏しいですが、現在の彼らを切り取ったリアリティというのは感じます。

Rating: 6.7/10



おとぎ話 "ONLY LOVERS" (Official Music Video)