佐藤千亜妃 「SickSickSickSick」

SickSickSickSick

SickSickSickSick

きのこ帝国のヴォーカリストによる初のソロ作。


R&B からの影響を公言し、実際に「クロノスタシス」や「LAST DANCE」などバンド本隊の楽曲に度々 R&B 要素を導入していた彼女。今回のデビュー作も砂原良徳プロデュースということで当然のようにそっち方面を予想していたのですが、実際の中身はそれだけに留まらず少しばかり斜め上の色味も加わっています。リード曲「Summer Gate」や「Signal」などは完全に直球 R&B という感じですが、表題曲「SickSickSickSick」ではノイジーに歪んだ声とギターがあどけない可愛らしさのトラックに重ねられ、その極端な美醜の対比が聴き手に強烈なインパクトを与える。また「Bedtime Eyes」は蕩けるほどに甘いドリームポップなのですが、その甘さの裏側にはふとした瞬間に全てが崩れ落ちてしまいそうな危うさ、ある種の毒を多く含んでいるように感じます。この不穏でナイーブな感覚から自分が最初に連想したのは Chara でした。もちろんヴォーカルのスタイルは全く違うものの、例えば「愛の自爆装置」や「シャーロットの贈り物」などを聴けば、その奥底に通ずる匂いがある気がするのですがどうでしょう。楽曲毎に表情を変える魔的な5曲。

Rating: 7.2/10



佐藤千亜妃 - Summer Gate