メトロノーム 「廿奇譚AHEAD」

1998年結成の3人組による、1年5ヶ月ぶり9作目。


「廿」は「にじゅう」。なんやかんやで結成20周年を迎えた彼らが、あくまでも振り返らずに前進するという意味合いを込めてのアルバム表題なのだと思います。えらく前向きなようですが歌詞の方はやっぱり「不安の殿堂」や「主人公ルート」など根暗で後ろ向きだったりしてナイーブなままの面も多く、悩んだり悲しんだりしながら転がり続けていくというひどく人間臭いもの。そもそもメトロノームというバンドはピコピコシンセ音を多用したり、ヴィジュアル的にもレトロフューチャー的な異世界感を演出したりしていますが、生身のバンドアンサンブルはパンク的な忙しない疾走感、骨の太い肉体派の演奏を主とする、無機質なようでいてとても人間味のあるバンドなのですよね。ポジとネガ、テクノとパンクという相反する要素があまり整理整頓されないまま取り込まれた結果、メトロノームという垢抜けなくも愛らしいキャラクターに転じている、というところでこの新作も非常にメトロノームらしい一枚と言えると思います。前作「CONTINUE」と比べてほとんど差異を感じないというのは良くも悪くもですが、コンスタントなリリースで安定感は出てきましたね。

Rating: 6.2/10



『血空』(Music Video)/メトロノーム