くるり 「ソングライン」

4年ぶりとなる12作目。


アルバム毎に作風がコロコロと変わるため、くるりというバンドに何を求めるかは人によって大きく異なるかと思いますが、肩肘張って大胆な変革を見せていた初期の頃に比べると、ここ最近の作品からは程良い余裕と成熟が見られ、彼らの魅力の二本柱である実験性と普遍性がより自然な形で馴染み合っているように感じます。それで今回の新譜。前作「THE PIER」ではエレクトロニクスから民族楽器までの雑多な音楽要素を取り込んで多国籍感を打ち出していたのが、ここでは純粋にメロディ/ハーモニーを聴かせるという原点に回帰してのグッドソングがずらり。フォークあるいはブルーズの感触が心地良いバンドアンサンブル、そこに自然に馴染むストリングスの豊かな音色。中には60年代風のサイケな意匠を施した表題曲「ソングライン」や、何故かのプログ・ハードロックインスト「Tokyo OP」のような濃いめの楽曲もあり、またそれ以外の一見あっさりとした牧歌的な歌モノにしても、実は細部まで練られたアレンジの厚みで聴き応えはしっかり。そして岸田繁のヴォーカルは情感を滲ませて歌い上げている様子が気持ち多めに見られたり、さり気なくも確実な深化。

Rating: 8.4/10



くるり - ソングライン