NORIKIYO 「馬鹿と鋏と」

馬鹿と鋏と

馬鹿と鋏と

相模原出身のラッパーによる、約1年半ぶり8作目。


アルバムタイトルからはやや攻撃的な印象を受けたのですが、それをスッパリ裏切るかのような表題曲「馬鹿と鋏と」のジャズトラック。方向性としては最近の時流に則したトラップから音圧強めのブレイクビーツ、中には憂いたっぷりの R&B ポップ「花火」、軽やかなレゲトン調の「Last Dance」といった楽曲など多岐に渡っており、また歌詞の方も自己を奮い立たせるものから周囲に向けた辛辣なメッセージ、彼の内面にあるブルーな感情をリリカルに綴ったものなど、NORIKIYO という多面的なパーソナリティを改めてひとつひとつ丁寧に提示したような内容。ただそれらはどんなビートであろうと確実に自分のものとして昇華した NORIKIYO の巧みなラップスキル、そして柔らかく陰りを帯びたムードが全体に通底しているのもあり、多様な枝葉の中心に一本の確かな幹を貫いています。特にトラップ曲ではフロウまで海外勢と同じものに引っ張られてしまいそうなところを、スパスパ押韻を決めながらきっちり NORIKIYO の味を打ち出している、その技量の高さに唸らされる。安定の器用な手つき、そして泥臭い人間味も感じられる流石の一枚。

Rating: 8.0/10



【MV】NORIKIYO/ 墓石屋の倅 (Son of a tombstone store) feat. DJ SOMA