Objekt 「Cocoon Crush」

Cocoon Crush

Cocoon Crush

ベルリン在住、 TJ Hertz によるソロユニットの4年ぶり2作目。


前作「Flatland」においては、例えば Aphex TwinAutechre のような IDM からの影響を見せつつ、ダンスプロパーなテクノとしての即効性も維持し、肉体的な躍動感が強く打ち出されていました。しかし今作ではその「踊れる」という枠組みすらも取り払い、一気に自由度を増した実験的なサウンドスケープが展開されています。異様に硬く研ぎ澄まされたビートの鳴りと、場面によっては雅楽を彷彿とさせるアトモスフェリックな上モノ類が重なり、そこから立ち昇るのは息が詰まるほどの緊張感が貫かれたディストピア的世界観。ただ漆黒に塗り潰されているように見えるアルバム全体の中にも、絶妙に緩急のついた流れが組み立てられています。「Dazzle Anew」「Nervous Silk」では Arca や The Haxan Cloak にも通じる前衛性が特に際立ち、その一方でそこはかとなくヒップホップあるいはファンクの要素も垣間見える「Deadlock」、微かながら作品中唯一色味のあるポップさが表れる「Runaway」と、どう転ぶか分からない微細な雰囲気の移ろいが作品全体のスリリングな印象を弥増しています。ユニット名の示す無機質さ、得体の知れなさがより強調されたような変異作。

Rating: 7.7/10


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