5lack 「KESHIKI」

KESHIKI

KESHIKI

東京都板橋区出身のラッパーによる、3年9ヶ月ぶり6作目。


実兄 PUNPEE が本格的にスターダムへと進出しつつある傍ら、5lack はそれをまるで意に介することのないように独自の道を進み続けています。ジャジーな暗がり、あるいはアンビエントの静けさを湛え、時には敢えてのノイズを塗してヴィンテージ感を帯びたトラック群。そこには遠くの夕陽を眺めるような侘しさやノスタルジーがゆらゆらと棚引き、その中でささやかな喜びや内省的な悲しみを交えながら、必要以上に自分を大きく見せたり、また必要以上に塞ぎ込んだりすることなく、あくまでも客観的な目線で今ここにいる自分を過不足なくさらりと切り取って見せる、そのさり気なくも流暢なスキルは今作でも健在です。オフェンス態勢の「SITT」「Turn」などもありますが、ここで特に印象的なのは「CUS」などで見せる、ほとんど歌と言って良い滑らかなフロウ。一定のテンションの中で見せる自由なメロディ感覚が随所で効かされ、今作中最も彼の心境が生々しく表れているように見える「Last day」や、ギターの音色が渋い「進針」に至ってはもはやブルースの境地。周りの景色が変わっても自分は変わらない、そのブレないスタンスが明確に表れています。

Rating: 7.4/10



Twiligh Dive/5lack