血と雫 「その雫が落ちないことを祈る」

その雫が落ちないことを祈る

その雫が落ちないことを祈る

森川誠一郎 (Z.O.A) を中心とする3人組の、約4年ぶり4作目。


曲を構成するのは飾り気のない音色で緩やかに爪弾かれるエレキギター、低く息を殺すような慎重さで鳴らされるドラム、そして言葉のひとつひとつを大切に紡ぐ森川の歌。先日の A/N【eɪ-ɛn】でのヘヴィネスに根差した表現とは真逆を行く、フォークあるいは昭和歌謡的な要素が主となるこちらのバンド。以前はほぼ即興セッションに近かったのが、事前にアレンジを練り込む作曲スタイルへシフトし、また彼ら初の試みとしてゲストベーシストを招くなど、制作において根本的な変化が起こっていますが、それらは安易に派手な装飾を増してキャッチーに向かうのではなく、従来の音楽性をさらに濃密ななものとするための判断なのだと思います。優しい静謐と緊張感が混在したムードはこれまでの楽曲と同種のものですが、以前よりもそこかしこでエモーションの発露が直接的に見られるようになり、特に冒頭「パトス」での、ファズの効いたギターソロに導かれるようにしてアンサンブル全体が少しずつ熱を高めていく、その演奏の迫力には強く惹き込まれました。内なる激しさがコップから漏れ出してしまう寸前のところで何とか踏み止まっている、あまりにも壮絶な美しさ。

Rating: 8.4/10



血と雫/目覚めの夜~gitarre instrumental #4~【Music Video】