花澤香菜 「ココベース」

東京出身の声優シンガーによる、2年ぶり5作目。


「claire」「25」でのネオ渋谷系、「Blue Avenue」でのジャズ/ファンク、そして前作「Opportunity」では Simply Red から楽曲提供を受けるなどで UK 感を取り入れる、といった具合にサウンド面では変遷を続けてきた彼女。それで今作はと言うと、槇原敬之水野良樹といった J-POP 代表と言える作家を筆頭に、素直なメロディ、素直な演奏がスッと入ってくる、これまでの中で最も飾りや衒いのない仕上がり。その中には素朴な表現の裏に鋭利さを忍ばせた橋本絵莉子作「おとな人間」、在日ファンクによるレイドバックした演奏が心地良い「パン」、大貫妙子×岡村靖幸という目を疑うタッグかつ「Young oh! oh!」の再来かという溌剌さの「ミトン」、真島昌利の詩世界がなだらかに広がる「満月の音」といった作家性の強めな楽曲も並んでいますが、聴き心地の良いドメスティックなポップスという意味ではいずれも共通しており、違和感のない流れで聴けます。ただこの人選がどういう狙いなのか、「ココ」が「ベース」だというアルバム表題通り彼女の本来の嗜好をそのまま反映した結果かもしれませんが、良くも悪くも今までで一番無難という印象。

Rating: 6.5/10



花澤香菜 『大丈夫』(Short Ver.)