Aimer 「Sun Dance」「Penny Rain」

Sun Dance(通常盤)(特典なし)

Sun Dance(通常盤)(特典なし)

約2年半ぶりとなる5作目。


改めて聴いても不思議な声の持ち主だと思います。R&B ディーヴァのようなふくよかさを持って朗々と歌い上げながら、その表面をスモーキーなフォーク感が覆っているようでもあり、清冽とした力強さと内省的でナイーブな翳り、その相反する色味を同時に感じさせる歌声。ただ今回の2枚は彼女が持つその両面性を敢えて分割し、光と影各々の側面にフォーカスを当てたコンセプチュアルな作りになっています。それでこちらはもちろん光サイド。agehasprings 所属の作家陣が全曲を担当し、これまでにはない勢いでオープンに開かれたポップネスが全面に押し出されています。フレッシュな爽快感に満ちた4つ打ちエレクトロチューン「ONE」「Monochrome Syndrome」、素朴な華やかさが添えられたアコースティックポップ「コイワズライ」「花びらたちのマーチ」など、いずれも過去作でのシリアスな重みから解き放たれた風通しの良さが印象的。しかし楽曲自体は J-POP の定型から大きく逸脱しているわけではなく、彼女自身のヴォーカルの力でようやく記名性が発生してるという感じで、その歌のポテンシャルにはいささか不釣り合いな気がしなくもないという。

Rating: 6.4/10



Aimer 『3min』MUSIC VIDEO (5th album『Sun Dance』『Penny Rain』4/10同時発売)




Penny Rain(通常盤)(特典なし)

Penny Rain(通常盤)(特典なし)

上の「Sun Dance」と同時発売となった6作目。


そしてこちらは表題通り太陽に対して雨、軽やかさに対して重厚さと綺麗に対を成した内容です。その中でハイライトに位置し最も強いインパクトを放っているのが、梶浦由記による「I beg you」と「花の唄」。元々アニソン界隈ならではの劇画タッチな曲調を得意としている彼女ですが、ここでもその手腕を存分に発揮し、ストリングスを惜しみなく投入して過剰なまでにドラマチックな緊張感を煽る。また歌詞においても怨念と言っても良いくらいの痛切な情感が詰め込まれ、下手すれば演歌かとも見紛うレベル。むしろ Cocco 作「眩いばかり」や TK 作「Stand By You」の方が、アルバムの中では息継ぎできるパートを担っているというのが面白い。以前から Aimer を知っている人にしてみればおそらくこちらの方が馴染み深いだろうし、その路線を真っ直ぐ突き詰めているという意味では安心できる内容かと思います。ただそれはそれで少し引っ掛かると言うか、ベタを追求して感情の振り幅をよりダイナミックにするのも、これ以上やりすぎると本当に演歌になってしまうし、この辺が上限打ち止めなのではという気もするのですね。もっと根本的な変化が必要な時期なのかも。

Rating: 6.6/10



Aimer 『Stand By You』MUSIC VIDEO (5th album『Sun Dance』『Penny Rain』4/10同時発売)