ドレスコーズ 「ジャズ」

ジャズ【通常盤】

ジャズ【通常盤】

志磨遼平によるソロユニットの、約2年ぶり6作目。


前作「平凡」に続いて今作もまたコンセプトアルバムの体を成しており、歌詞の内容はインタビューにおける志磨遼平本人の言説でロジカルに補完されています。曰く、倫理を重んじて多様性を受け入れ、なるべく摩擦を無くして生きていこうとする我々は、次第に熱を失って緩やかに絶滅に向かっているのではないか…という人類規模の終末観がテーマ。そして音楽性はまたも大胆に変化し、アコースティック管弦楽器を全編に導入して異国情緒を打ち出した、ともすれば Beirut にも匹敵するジプシーフォーク/バロックポップへとシフト。劇的なカタストロフィなど無く徐々に朽ち果てていく様を描いた、その退廃的な世界観はどっぷり冬枯れの哀愁を漂わせる楽曲と絶妙にリンクしています。楽曲によってはスカ調だったりダンサブルな軽やかさを打ち出すこともありますが、一貫して仄暗い死の匂いを漂わせる歌詞世界がそこに重なると、まるで聴き手を崖の底へ向かうパレードの中に引き摺り込んでいくような、良い意味で背筋の寒くなる感覚に襲われる。「三文オペラ」劇伴の経験がそのまま活かされたであろう、その構成、演出力の強固さにはすっかり恐れ入りました。

Rating: 8.4/10



ドレスコーズ “THE END OF THE WORLD PARTY” PART 1