Tyler, the Creator 「IGOR」
今までとは別の意味での強烈さを感じました。前作「Flower Boy」に引き続いて R&B やソウルの要素がメイン、しかしそこにエグ味の強い奇矯なシンセサウンド、不意打ちのように攻撃的なレイヤーが組み込まれることで、柔らかく芳醇なメロディに敢えて原色のペンキを塗りたくるような、良い意味でキッチュな印象を強く受けます。またラグジュアリーな雰囲気とハーモニーの深みに酔い痴れる「EARFQUAKE」や「RUNNING OUT OF TIME」などと、緊張感あるダークネスを醸し出す「NEW MAGIC WAND」や「WHAT'S GOOD」が連結されたアルバム全体の流れ。これはソウル由来の上品な心地良さや、一貫してナイーブな歌詞でオブラートに包まれてはいるものの、曲毎に意表を突いてくるスリリングな感覚も常にあり、その優美さと刺激の絶妙なバランス感覚がスパイスとなって、彼のもつポップセンスを一層キャッチーなものに引き立てているように思います。ほとんどヒップホップ／ R&B 界隈のオールスター状態なゲスト陣も、前に出しすぎずに違和感ないスムースな流れを重視する、という点でも Tyler のプロデュース力の高さが際立つ。充実の挑戦的ポップ作。
Rating: 8.5/10
