椎名林檎 「三毒史」

三毒史(初回限定生産盤)

三毒史(初回限定生産盤)

5年半ぶりとなるオリジナル6作目。


日本の歌謡界とロック界、双方に対する林檎女史の盛大なトリビュートと言うか、林檎キュレーションによる一大オルタナティブ歌謡祭みたいな印象を受けました。バンドアンサンブルにエレクトロニクス、ストリングスやホーンセクションも盛り盛り、とにかく盆と正月が一緒に来たようなという形容がピッタリ嵌る豪勢さのアレンジメント。そこに招聘された6人のゲストヴォーカルはいずれも適材適所、むしろ宮本浩次に対してのビッグバンド生命賛歌「獣ゆく細道」や、櫻井敦司に対しての破壊的インダストリアル「駆け落ち者」など、林檎の方から各ゲストのイメージに意図的に寄せていってる節がある。各人がどのような経歴、どのようなキャラクターを持っているかを十分に把握した上でデュエットに臨み、結果両者の個性が強烈に際立ってくるという、これこそ彼女が成し得る最大限のおもてなしでありコラボとしての理想形でしょう。なおかつ「どん底まで」や「至上の人生」などはダイレクトに初期の「無罪」「勝訴」期を彷彿とさせる曲調だったりで、もはやサービス精神が全方位的。作家としてのエゴとエンターテイナー気質がフルに発揮された充実作です。

Rating: 8.8/10



椎名林檎 - 鶏と蛇と豚