サカナクション 「834.194」

6年3ヶ月ぶりとなる7作目。


音楽的な前進を果たしつつサカナクションとしてのポピュラリティを保つ、その二律背反的な命題に律義なまでに向き合った結果、おそらく彼らに提示し得るエゴとポップの最大公約数がこの作品なのだと思います。4つ打ちビートを主体としながらも、昨今のヒップホップや R&B 界隈で顕著な先鋭的ベースサウンドは敢えて拒否。むしろ「忘れられないの」での BPM を抑えたファンク演奏であったり、「ワンダーランド」でのスケール豊かな大文字ロックサウンド、あるいは先行曲「多分、風。」や「新宝島」でのユーモラスな80年代風味シンセポップ路線にしても、世間の潮流に囚われず、あくまで「サカナクション」としての個を突き詰めているように見えます。また2枚組18曲の大ボリュームながら、無理なくスムースにビルドアップしていくリズム、曲順の妙もあって意外なほどサラリと聴ける。この様々な面でのバランスをここまで微細に調整するのには、そりゃ長いインターバルも空くしリリース延期もするよなという。ただ根本となる山口一郎のメロディが良くも悪くも完成されきっていて、やや既視感も見えるという弱点はあるのですが。

Rating: 7.0/10



サカナクション / 忘れられないの