人間椅子 三十周年記念オリジナルアルバム「新青年」リリースワンマンツアー @ umeda TRAD

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フェス以外のライブレポート書くの3年ぶりみたいですね。わ~お。




ニューアルバム「新青年」はチャート自己最高記録を更新、リード曲「無情のスキャット」の MV は海外のメタルファンにもリーチして約200万まで再生回数が伸び、ヒストリー本「椅子の中から」は重版が決定、そしてこの日のレコ発ライブは満員に近い客入り。そんな順風満帆と言って良いバンドの勢いがそのまま客にも伝わっているようで、まあ何とも、おどろおどろしく猟奇的な題材を取り扱っているバンドとは思えないほど、エネルギッシュで幸せなムードに満ちたライブなのでした。メンバー皆とにかく生き生きとしてるのだ。もうすでに50を過ぎたおっちゃんが、思春期の頃から心酔している音楽と文学の混ぜ合わせで、今でも無邪気なまでに伸び伸びとしたパフォーマンスを見せる、その様子を何と表現すれば良いか。自分はリスペクトを込めて Kawaii と評したいです。こんな Kawaiiness に満ちた中年になりたい。


セットリストは当然新譜の曲が中心、そこに様々な時期の過去曲を織り交ぜるという形なわけですが、その途中の MC でベース鈴木研一がとても印象的なことを喋っていました。曰く、「昔の曲はステージの上の3人だけで盛り上がっていて、お客さんとの間に壁が出来てる感じがするねえ」ということを。本人は何気ない素振りで言ってましたが、これって凄く客観的で重要な視点なのではないかと、思わずこちらもハッとさせられた。


人間椅子の曲は1番2番と続いた所で、突如全く別の曲が挿入されたかのように大胆なテンポチェンジをすることが多く、それが演奏のスリルを際立たせているのですが、昔の曲はその展開がさらに多段式で、ほとんどプログレというか組曲のような状態になっている場合もあり、それは特にライブという場に置いては冗長と言うか、ややついて行き難くなることもしばしばありました。もちろんそれは良かれ悪かれで、そのマニアックさこそが良いんだという御仁も多くいるでしょうが、今の人間椅子はそういった複雑な音世界の構築よりも、明らかに客とのダイレクトなキャッチボールを重視し、会場全体を引っくるめて楽しんでいる風に見える。新旧の曲を交互に取り揃えることで、その違いがより分かりやすく表れていたように思います。デビュー当時から頑なに自らのスタイルを堅持し続けているように見えた彼らにも、よくよく考えれば時代が進むとともに変容が発生していて、それが現在の好調に繋がったのだろうと。


新譜中最もソリッドでキャッチーな「あなたの知らない世界」に始まり、「いろはにほへと」や「地獄の申し子」の明朗なコールアンドレスポンス、ヘヴィなサウンドの魅力が際立った「涜神」~「今昔聖」の流れと、いずれにしても意表を突く曲展開は残しつつ、最近の曲になればなるほど即効性が高い。個人的に「新青年」は、音源で聴いたときには悪い意味でのマンネリな印象が否めない部分もチラホラあるなという感じだったのですが、実際にライブで体感すると、そういった細かなケチを吹き飛ばすくらいのエナジーが注入され、とても張りのある力強さを感じました。


つまり何が言いたいかといいますと、現在の人間椅子は明らかに外向きで、前向きで、イケイケドンドンな勢いを持った、確実に「今」のバンドだということです。今回のライブで改めてそれを実感できたので行って良かった。また行きます。


セットリスト:
SE. 新青年まえがき
1. あなたの知らない世界
2. 地獄のご馳走
3. 鏡地獄
4. 青い衝動
5. 盗人讃歌
6. 幻色の孤島
7. 無情のスキャット
8. 太陽黒点
9. いろはにほへと
10. 涜神
11. 今昔聖
12. 地獄小僧
13. 地獄の申し子
14. 人面瘡
15. 針の山
(アンコール)
16. 月のアペニン山
17. 地獄風景
(アンコール2)
18. なまはげ