cali≠gari 「この雨に撃たれて」「10 -Rebuild-」

7年半ぶりのビクター復帰作となる EP 作品。


表題曲「この雨に撃たれて」はシリアスな焦燥感に満ちた疾走曲。忙しなくバタついた演奏に哀愁の歌謡メロディが絡みつき、またグリグリ這い回る強烈なベースライン、スペーシーな広がりを見せるギターソロなども渾然一体化した音像は、その洗練されない荒々しさがちょうど歌詞のテーマである桜井青の死生観、「笑ったままで遂げたい」という切実な決意表明を投影するには相応しいものだと思います。「雨三部作」と謳ってはいるものの、この曲と他の「冷たい雨」「続、冷たい雨」とは曲調も歌詞も方向性が違い、あまり関連性はありません。ただいずれの楽曲も桜井青の特にエモーショナルな側面が表れたものであり、この曲を完成させることで自分の気持ちにケリがつけられる、彼の中で重要な意味を成しているという意味では共通すると言えるかも。またかつてはある種の癒し、心の拠り所となっていた「雨」が、現在では深い悲しみの象徴として扱われているというのも少し考えさせられる。この3曲の間に横たわるおよそ20年の長い月日、その時間の中では雨ですらも同じままではいられないと思うと、思わず遠い目になってしまうな。

Rating: 7.9/10


「この雨に撃たれて」夕立盤に付属の、2009年作のリミックス+新録盤。


完全に録り直した「-踏-」「スクールゾーン」のみならず、他のリミックス曲もオリジナル盤とはかなり印象が変わってます。原曲を大きく崩すということはしてませんが、どの曲もバンドサウンドをより音圧の強く骨太なものにビルドアップ。リズム隊を前に引き出すことでアンサンブルのガシャガシャした賑やかさが助長され、良くも悪くも整理整頓された感の強かった元テイクより、ある意味カリガリらしいアングラ感が強まっているように感じます。この音像は今現在の彼らのモードと直結するもので、これで活動再開以降の全アルバムが綺麗に同一線上に並んだ感がある。それでいて今作本来の魅力も全く損なわれていません。各メンバーが活動休止中に培ったソロキャリアの経験を大胆に落とし込んだ、過去のどのカリガリでもない、しかし確実にカリガリでしかない新たな姿。他に類を見ない形でのニューウェーブリバイバルを体現した完全復活作が、さらに10年の時を経てなお進化を遂げているという。再結成組の中で過去の栄光にほとんど囚われず、これほどまでに現在進行形でい続けているバンドが他にいるだろうか。これが初回盤特典というのも意味わからん。

Rating: 8.9/10



カリ≠ガリ - この雨に撃たれて(カリ≠ガリのコマーシャル)