Slipknot 「Slipknot」「Iowa」「Vol.3: (The Subliminal Verses)」

Slipknot

Slipknot

1999年6月発表のデビュー作。


遅ればせながらデビュー20周年おめでとうございますということで。現在でもライブで演奏される名曲揃いではありますが、今聴くと完全体一歩手前というか、水と泥と油が混ざり合わないままマーブル模様を描いているような、要するに粗削りな印象を受けますね。Ross Robinson 印の薄汚いディストーションや軽快で抜けの良いドラムなど、この頃のサウンドはニューメタルと言いつつパンク/ハードコアっ気の強いものという印象があるし、同時にヒップホップの要素も楽曲のドライブ感に拍車をかける。このごった煮感がどこまで彼らの意図的な狙いなのかは正直わかりません。ただメタルにとっての90年代というのが、グランジオルタナティブ隆盛に始まり、ファンクやらインダストリアルやらラップやら、様々な他ジャンルと接続して枝葉を増やしていった過渡期というイメージがあるので、その10年間の最後に彼らのようなバンドが登場するのはある意味必然だったのかなと。ところで彼らのカタログ内で特にラップ要素の強いこの作品を、ラップ主権の今現在に敢えてその側面に注視して聴いてみると、不思議なことにめちゃくちゃ新しく感じる。再評価の兆しだ。

Rating: 8.8/10



Slipknot - Spit It Out [OFFICIAL VIDEO]




Iowa

Iowa

2001年8月発表の2作目。


音作りをより硬質にシェイプアップすることで前作のごった煮闇鍋感が払拭され、今日のスリップノットのスタイルがここでようやく完成しました。きめ細かに収斂したヘヴィネスの音塊を立て続けに放射し、もちろん歌詞は悪意、怨嗟の嵐。「People=Shit」や「Disasterpiece」など随所でデスメタルを意識したパートを挟んでくる点からも、アングラシーンの音楽を一般層まで押し上げて攻めに徹する、これで天下取ったろうと勝負をかける気満々なのが伺えるリキ入りまくりの楽曲群。2019年現在においてサウンド的にも量的にも未だにこの作品がピーク値となっているわけですが、同時に底抜けのキャッチーさも秘めてる。このアルバムを聴くと今でも10代の頃を思い出します。それまで海外のメタルと呼ばれる音楽に触れたこともなかったのに、彼らの曲は全ての抵抗や先入観を飛び越え、直球で身体を打ち抜いた。むしろ彼らはそのイロモノ的な先入観すらも武器にして、時代の顔にまで成り得るほどの幅広い受け皿を確保していた。実際こんなに愉快痛快なエンターテインメント作品、他ではそうお目にかかれないでしょ。ゼロ年代至上の重量級ポップアルバム。

Rating: 9.4/10



Slipknot - People = Shit (Audio)




The Subliminal Verses Vol.3

The Subliminal Verses Vol.3

2004年5月発表の3作目。


メロディやウィスパーヴォイスの増加、ブラックメタル由来であろうトレモロリフの多用、また音作りはさらに重心を低く構えたスクエアなヘヴィネス重視のものとなり、ニューメタル/ミクスチャーメタルから正統派メタルへの回帰が見られる、というのが一番の特徴。また「Circle」や「Vermilion Pt.2」のようなアコースティックパートまで加わり、猪突猛進そのものだったこれまでよりも豊かなメリハリが生まれ、憂い、悲しみの深い陰影が一気に増してきた。この変化によって彼ら本来の魅力が薄れてしまったと当時は賛否両論だった記憶がありますが、今振り返ってみるとこのシリアスな悲壮感というのは現在の彼らのモード、最新作「We Are Not Your Kind」へと完全に直結する、明らかに重要なエッセンスですね。またこれ以降彼らはビルボード三連続首位を獲るほどの巨大な存在となるわけですが、メタルとしての矜持を真っ当にアピールし始めたこの作品の時点で、その王者の風格がすでに漂い始めている、その意味でも間違いなくここが重要なターニングポイントだったと思います。変わる部分と変わらない部分、そのバランス感覚にも彼らは長けていたのだなと。

Rating: 8.6/10



Slipknot - Duality [OFFICIAL VIDEO]