Chelsea Wolfe 「Birth of Violence」

BIRTH OF VIOLENCE (バース・オブ・ヴァイオレンス: +bonus track)

BIRTH OF VIOLENCE (バース・オブ・ヴァイオレンス: +bonus track)

カリフォルニア出身のシンガーソングライターによる、2年ぶり6作目。


ゴシックフォークを出発点としながら、3作目「Pain is Beauty」ではシンセサウンドを導入して曲調の幅を押し広げ、続く「Abyss」や「Hiss Spun」では大胆にもドゥーム/スラッジメタルへと向かって闇の深度を増していった、という変遷がこれまでにありました。そして今作はと言うと初期のフォークソングへと回帰。しかしながら単なる反動というわけではなく、音世界の作り込みは以前よりも格段に精度が高められています。上品かつシアトリカルに情感を発するヴォーカルの静かな迫力、それに導かれるようにしてギターやリズム、ストリングスが折り重なり、近作のメタル要素とはまた別種の、窒息しそうなほどに重苦しいヘヴィネスが充満しています。きっと先述のジャンル横断の経験が功を奏しているのだと思いますが、空気感を活かした立体的な音処理が異様に緻密に練り込まれていて、それによって禍々しい妖気と繊細な柔らかさがひとつに溶け合い、楽曲をさらに説得力あるものとしています。インタビューの中で「重厚は衷心と繋がり得る」と彼女は述べていましたが、その哲学が見事に体現された、ひとつの到達点と言える傑作です。

Rating: 9.1/10



Chelsea Wolfe - American Darkness (Official Video)