POLYSICS 「In The Sync」 / The Vocoders 「1st V」

約2年ぶりとなる17作目。


現在の4人体制がすっかり板についてきたようで、心なしかいつもより生のバンドサウンドによる荒々しさが強化されている気がします。要所要素でリズムを分解しつつ、決してスピード感だけは殺さないアッパーチューンの応酬。もちろんポリにとって生の要素が重要なのは今に始まったことではないし、むしろデビュー時からやってること自体はほぼほぼ変わってないのだけど、今も昔も代替の効かない存在としてエネルギッシュな音を聴かせてくれるのは頼もしいですよね。最後の「Part of me」で甘酸っぱい爽快感を広げて終わるという構成も良い。ところで、これだけ生要素が強いにもかかわらず、ポリの音楽を形容しようとなると「テクノポップ」という単語が必ず出てくるのが、よくよく考えれば不思議ではある。もちろんピヨピヨとシンセを入れてくる場面は多数あるけども、比重としては明らかにパンクの方が上。単純に生演奏の上にシンセを乗っけるだけでテクノポップのニュアンスが生まれるというわけでもないだろうし、この味の決め手はいったい何なのか…と考えながら下記の「1st V」を聴くと、やはり彼らの曲作りの根幹がテクノ、ニューウェーブなのかと。

Rating: 7.0/10



POLYSICS 『Part of me』




1st V (初回生産限定盤) (DVD付) (特典なし)

1st V (初回生産限定盤) (DVD付) (特典なし)

POLYSICS の別名義バンドによるデビュー作。


「世界唯一のカフェテクノグループ」を謳うこの別動隊。これがカフェに合うかどうかはさておき、おそらく他のバンドにとってのアンプラグド形式がポリにとってはこの形態、という位置付けなのだと思います。ただ正直に言うと本隊との印象の違いはさほどありません。ポリから生の要素を排除して、BPM を落ち着かせたらまあこうなるだろうな…というイメージをそのまま地で行ってる感じで、意外性の点では弱い。しかしこれは言い換えれば、この作品が彼らの幹を成す部分を改めて明確に表していると思います。音は完全にチープな音色で固められた、70~80年代頃のテクノポップへのオマージュ。課外活動を立ち上げるとなった時にこのテクノ路線がまず初めに出てくるというのが、彼らの中での音楽要素のヒエラルキーを端的に示しているだろうし、このテクノとパンク両者の接続点を見出して拡大解釈するハヤシのセンスというのは、これこそ正しくニューウェーブへの造詣の深さの証明ではないかと。この作品自体は良くも悪くも従来のコアファン向けという印象ですが、興味深い内容ではあります。

Rating: 6.0/10



The Vocoders 『Part of me』